[研究成果の具体的内容] 高脂肪食負荷肥満マウスを用いて、脳内食報酬系中枢の神経機能の変化に関して電気生理学的研究を行った。肥満マウスの脳内食報酬系中枢である中脳腹側被蓋野(ventral tegmental area: VTA)ドパミン神経機能の変化に関して、次の点を明らかにした。「肥満マウスにおいて、VTAドパミン神経でみられるD2受容体刺激によるG蛋白共役型内向き整流性K+(GIRK)チャネル電流増強の抑制は、D2受容体に特異的であり、他のG蛋白結合型受容体にはみられない現象であった。」VTAドパミン神経のGIRKチャネル電流はG蛋白結合型GABAB受容体を介して増強されることが知られている。しかし、D2自己受容体とは対照的に、GABAB受容体によるGIRKチャネル制御には、肥満マウスと非肥満マウスのVTAドパミン神経の間で差がみられないことを確認した。 [研究成果の意義と重要性] 本年度の研究成果からは、肥満におけるVTAドパミン神経の電気生理学的機能変化や神経伝達物質に対する多様な反応形式が明らかになった。本年度の研究成果を基盤として、肥満による脳内食報酬系機能変化の細胞レベルでの機序究明が期待できる。そして、既存のドパミン関連薬剤を用いた新規肥満治療法の開発に関して有用な知見が得られる。
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