研究課題/領域番号 |
22500687
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研究機関 | 防衛医科大学校 |
研究代表者 |
石塚 俊晶 防衛医科大学校, 医学教育部・医学科専門課程, 准教授 (30399117)
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研究分担者 |
渡邊 康裕 防衛医科大学校, 医学教育部・医学科専門課程, 教授 (90127324)
藤田 真敬 防衛医科大学校, 防衛医学研究センター, 准教授 (20525927)
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キーワード | 高血糖 / 低酸素 / 間葉系幹細胞 / HIF-1α / スーパーオキサイド / 血管新生因子 / プロテアゾーム |
研究概要 |
糖尿病における虚血部位での血管再生能低下には、低酸素環境での幹細胞機能障害が関与するとされるが、詳細な分子機構は未解明である。昨年までの研究で、高濃度グルコース刺激が、PKC活性化や酸化ストレスの増大を介して、低酸素環境でのマウス骨髄由来間葉系幹細胞(MSCs)の転写因子HIF-1αの発現誘導や血管新生因子VEGF-AおよびPDGF-Bの発現・産生を抑制している可能性が示唆された。そこで、H23年度は、HIF-1αの分解に関与するとされるプロテアゾームの活性化を特異的に阻害するMG132 5μMをMSCsに前投与し、高濃度グルコース刺激(30mM)による低酸素環境(5% O2)での幹細胞機能障害に与える影響をウェスタン・ブロット法およびELISA法で検討した。その結果、MG132を前投与すると、高濃度グルコース刺激による低酸素環境でのHIF-1α,VEGF-A,PDGF-B発現誘導抑制作用を有意に回復させた。また、MSCsにあらかじめHIF-1α siRNAを導入しHIF-1αをノックダウンしておくと、MG132によるHIF-1α,VEGF-A,PDGF-B発現回復作用は消失した。さらに、ウェスタン・ブロット法やスペクトロメーターを用いた解析により、高濃度グルコース刺激が、低酸素環境でのMSCsの活性酸素種産生酵素に与える影響を検討した。高濃度グルコース刺激(30mM)は、低酸素環境(5% O2)でのNADPH oxidase gp91phoxの発現およびミトコンドリアcomplex I,complex IIIの活性を有意に促進させた。以上の結果より、高濃度グルコース刺激による酸化ストレスの増大およびプロテアゾームの活性増強が、低酸素環境でのMSCsのHIF-1αの分解促進につながり、血管新生因子の発現・産生が抑制された可能性が考えられる。糖尿病患者の幹細胞による血管再生治療において、プロテアゾーム活性の調節が新たな治療改善につながる可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の研究計画では、in vivoでの検討として、ラット骨髄間葉系幹細胞にプロリル水酸化酵素のshRNA発現ベクターを導入し、培養増殖した後、1型糖尿病モデルラットの後肢虚血障害領域に投与し、その影響を検討する予定であった。しかし、細胞へshRNA発現ベクターを導入しノックダウン効果を確認したが、細胞の培養増殖とともにノックダウン効果が減弱してしまい、効果を持続したままラットに投与することが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
ラット骨髄間葉系幹細胞に導入したプロリル水酸化酵素のshRNA発現ベクターが、細胞分裂に伴い、何らかの修飾を受けた可能性が考えられるため、他のウイルスベクターによるshRNA発現ベクターを数種類作製し、細胞を培養増殖させた後も、プロリル水酸化酵素のノックダウン効果が持続するベクターを見出す。その上で、投与実験を行い、糖尿病モデル動物での虚血障害に対する影響を検討し、高血糖によるHIF-1αの分解促進がin vivoで起こっているのかを検証する。また、平成24年度は、DNAマイクロアレイを用いて、高グルコース刺激により、低酸素環境下の間葉系幹細胞で著しい発現変動がみられる遺伝子を特定し、HIF-1α以外の分子機序が関与しているかを検討する。
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