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2012 年度 実績報告書

能動的音楽療法による高齢者の口腔機能向上効果に関する疫学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22500688
研究機関国立保健医療科学院

研究代表者

三浦 宏子  国立保健医療科学院, その他部局等, 統括研究官 (10183625)

研究分担者 原 修一  九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (40435194)
守屋 信吾  国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (70344520)
研究期間 (年度) 2010-10-20 – 2014-03-31
キーワード加齢・老化 / 口腔機能 / 音楽療法 / 音声分析 / 健康関連QOL
研究概要

目的:歌唱等の能動的音楽療法は、簡単に取り組むことができる口腔機能向上プログラムとして実施されることが多いが、その効果について定量的に評価した研究は少ない。本年度の研究事業では、歩行や摂食等の基本的ADLは保持されているものの、手段的ADLの低下が認められる虚弱高齢者を対象として、歌唱プログラムへの取り組み状況、口腔機能評価値や健康関連QOLとの関連性を調べた。
方法:対象者は、宮崎県延岡市の養護老人ホームに入所している虚弱高齢者77名である。いずれの対象者も要介護度は付与されていないが、高次の日常生活機能の低下所見が認められた(p<0.05)。口腔機能の評価については、単位時間における基準の単音節の発語回数をもとに舌の巧緻性を評価するオーラルディアドコキネシスを用いた。また、健康関連QOLの評価には、国際評価指標の一つであるSF-8日本語版を用いた。歌唱プログラムを日常生活の楽しみとして、積極的に取り組んでいるかどうかについて、聞き取り調査にて2区分尺度にて評価した。
結果・考察:対象者において、日常生活の楽しみとして歌唱に積極的に取り組んでいる者は16名(20.8%)であった。歌唱プログラムに積極的に取り組んでいる群では、対照群と比較して、単音節/pa/、/ta/、/ka/を用いた3種のオーラルディアドコキネシス評価値において、有意に高い値が認められた(p<0.05)。また、健康関連QOL下位項目である活力に関する評価値において、歌唱プログラムに積極的に取り組んでいる群では有意に高い数値を示した(p<0.05)。これらの知見は、虚弱高齢者に対する歌唱等の能動的音楽療法の口腔機能向上に関する効果を示唆しているものと考えられ、昨年度の研究にて報告した健康高齢者での状況と異なる結果が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度において、能動的音楽療法の口腔機能向上効果を評価するパラメータを見出し、高齢者における標準値等を明らかにした。2年次には、健康高齢者において、歌唱プログラムへの積極的な取り組み状態が、客観的口腔機能評価値や健康関連QOLに与える影響について調べた。本年度では、虚弱高齢者に対しても調査研究を進めたことにより、多様な心身状況を示す高齢期での能動的音楽療法による介護予防効果に関するデータを、幅広く収集することができた。また、健康関連QOLスコアとの関連性を調べることにより、能動的音楽療法がもたらす精神的健康に対する効果を明らかにしつつある。また、これらの調査研究を遂行することにより、高齢期の口腔機能評価方法の確立を図ることができただけでなく、今後の介護予防としての口腔機能向上プログラムの実施による効果を数量的に評価できるようになった。

今後の研究の推進方策

平成25年度は、本研究事業の最終年度となるため、これまでの横断研究の結果をもとに、歌唱プログラムに他の運動機能向上プログラムを組み合わせた複合型プログラムを開発し、実際に虚弱高齢者に3か月程度実施してもらい、その口腔機能向上効果について、これまでの研究事業で得られた測定パラメータを用いて、その口腔機能の向上状況について客観的評価を行う予定である。また、介護予防効果を評価する上で不可欠の要素である健康関連QOLとの関連性については、引き続きSF-8によるアセスメントを行い、特に精神的健康度に与える影響について定量的に把握したい。最終的には、横断研究と平成25年度に実施する縦断研究の結果をもとに、歌唱等の能動的音楽療法がもたらす効果についてのエビデンスについて確立を図る。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 地域高齢者における活力度指標と摂食・嚥下関連要因との関連性2013

    • 著者名/発表者名
      三浦宏子
    • 雑誌名

      日本老年医学会雑誌

      巻: 第50巻 ページ: 110-115

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 地域在住の55歳以上の住民におけるオーラルディアドコキネシスの基準値の検討2013

    • 著者名/発表者名
      原修一
    • 雑誌名

      日本老年医学会雑誌

      巻: 第50巻 ページ: 258-263

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 養護老人ホーム入所高齢者におけるオーラルディアドコキネシスとADLとの関連性2012

    • 著者名/発表者名
      原修一
    • 雑誌名

      日本老年医学会雑誌

      巻: 第49巻 ページ: 330-335

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Factors associated with self-assessed masticatory ability among community-dwelling elderly Japanese2012

    • 著者名/発表者名
      Moriya S
    • 雑誌名

      Community Dental Health

      巻: Vol. 29 ページ: 39-44

    • DOI

      10.1922/CDH_2649Moriya06

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Influence of dental treatment on physical performance in community-dwelling eldelry persons2012

    • 著者名/発表者名
      Moriya S
    • 雑誌名

      Gerodontology

      巻: Vol.29 ページ: e793-800

    • DOI

      10.1111/j.1741-2358.2011.00563x

    • 査読あり
  • [学会発表] 今後の歯科保健医療ニーズに関する調査・分析2012

    • 著者名/発表者名
      三浦宏子
    • 学会等名
      第71回日本公衆衛生学会
    • 発表場所
      山口
    • 年月日
      20121024-20121026
  • [学会発表] 地域住民の音声・構音機能が健康関連QOLに及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      原修一
    • 学会等名
      第71回日本公衆衛生学会
    • 発表場所
      山口
    • 年月日
      20121024-20121026
  • [学会発表] 在宅高齢者における摂食・嚥下機能とQOLとの関連性-宮崎県北地域における調査より-2012

    • 著者名/発表者名
      原修一
    • 学会等名
      第17回・第18回共催 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120831-20120901
  • [学会発表] 高齢者の摂食・嚥下機能と健康関連QOL2012

    • 著者名/発表者名
      三浦宏子
    • 学会等名
      第12回日本抗加齢医学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20120622-20120624
    • 招待講演
  • [学会発表] 高齢者における口腔機能の向上とQOL2012

    • 著者名/発表者名
      三浦宏子
    • 学会等名
      第55回日本歯周病学会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120517-20120519
    • 招待講演
  • [図書] Oral Health Care -Prosthodontics, periodonotology, biology, research and systemic condition-2012

    • 著者名/発表者名
      Miura H
    • 総ページ数
      372
    • 出版者
      INTECH

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公開日: 2014-07-24  

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