多重債務者に生活支援に関する研究の総括を行った。本研究は平成22年度からの3年間にわたるものであり、24年度はその最終年度となった。前年度までのフランスを中心とする、債務者の生活を総体としてとらえる支援が債務者自身の生活再建に有効に機能している状況の認識を踏まえて、日本の土壌に合った形で、生活支援を行う場合のノウハウや特性を検討した。 韓国調査により得たものは、債務調整委員会という金融業界の出資による相談機関が最も活用されており、日本におけるクレジットカウンセリング協会と同様な活動を行っていることが確認された点である。 関係者とのインタビューでは、日本では消費生活相談員やケースワーカーよりも司法書士、弁護士に負うところが大きく、結局は法律事象にかかわる段階的解決に持ち込んでいくことになり、債務整理や過払い請求などにより金銭的な問題解決は一時的には落ち着いても、その後の生活再建、社会復帰的な部分については一様に大きな効果を上げているとは限らないことも理解できるものであった。 しかしながら債務者の生活再建のための手厚いカウンセリングを行っている例もあり、全国にそのレベルを普及させることは困難であることは言うまでもないが、参考になる方法(相談対応の仕方など)は今後の相談・支援者の育成に役立つ情報を入手できたと考えている。 研究者との交流の中で確認できた点として、多重債務者への生活支援のポイントが、その支援の目的を明確化するとともに、本人の自力解決能力を育成することや、セルフコントロール能力を回復していくように仕向けるカウンセリングにあることを挙げておきたい。
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