本研究は、21世紀の最大課題である持続可能な社会実現にむけて、CO_2排出量を低減し、「低炭素社会」のライフスタイル構築指針を提示することを目的としている。そのために、先住民と現代社会人との環境観・価値観、情報活動、そして、CO_2排出量に表される生産活動、消費活動を比較分析し、CO_2排出量削減に有効なカーボンフットプリントを開発して、その活用をはかる。 本年度は、ニュージーランドの先住民マオリを調査し、彼らの価値観とライフスタイルと本質的に結びついているマオリ・エスニシティの分析を行った(「エスニシティの多様化と新たなマオリ概念の展開」日本ニュージーランド学会誌、17巻、2-12)。その結果、先住民マオリは、高度情報化がすすむ現代社会の中で、意識やライフスタイルが多様化していること、しかし、新たにマオリ的なものを模索する動きが出てきていることを明らかにした。また、日本の家庭における28年間のCO_2排出量の変化を計算し、ライフスタイルとの関係を明らかにした(「家計消費とCO2排出量からみる29年間(1980年~2008年)のライフスタイル」日本消費者教育学会中部支部第4回例会)。さらに、日本の家庭ごみの減量をライフスタイルとの関係から分析し、CO_2排出量削減法を議論した(「家庭のマテリアルフローからみたごみ減量と消費者教育」、消費者教育、30巻,43-57)。 以上のことから、現代社会において、先住民、先進国の現代人は、共に、近代的なライフスタイルを続けながらも、その根底には、CO_2排出などによる環境負荷に対して、日常生活レベルから再考しようとする意識があることが明らかとなった。したがって、本研究の次段階として、CO_2削減のツール、カーボンフットプリントを開発することにより、「低炭素社会」のためのライフスタイルの構築が可能になると考えられる。
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