研究課題/領域番号 |
22500699
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
杉井 潤子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70280089)
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研究分担者 |
瓜生 淑子 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (20259469)
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キーワード | ケア / 受容性 / 対等互酬性 / 高齢者介護 / 保育・育児 |
研究概要 |
長寿高齢社会にあって、加齢に伴い「高齢者になること/高齢者であること」、「要介護になること/要介護であること」に対する不安や忌避感、社会的排除意識が生じている。老いの差異化・差別化のなかで要介護性を受容できない状況にある。 本研究は、従来、別次元でとらえられてきた「保育における要養護性」と「介護における要介護性」を理論的に統合し、生-老-病-死を紡ぐ連続体として理解する試みを行う。具体的には、ケアの受容性・対等互酬性という観点から、ライフコースにおけるチャイルドケア(要養護性)にみられる「子どもの正の学習」(できるようになることを学ぶ)と、ナーシングケア(要介護性)にみられる「高齢者の負の学習」(できなくなることを学ぶ)とに焦点をあて、成長と老化の価値を探り、最終的には要介護性(ケアされることを受容すること)を相対的に理解することの意義を見出すことを目的としている。 平成23年度は、学校教科書、施策サービスおよび市場商品などを通して、ケア内容の比較調査を行い、ライフコースにおける要養護性と要介護性の対比に関する研究をおこなった。その結果、(1)家庭科教育の教科書分析では、人の一生を扱うものの、子どもの成長発達やふれあいに関する保育学習が主であり、高等学校で高齢者理解を学ぶが、あくまでも介護対象となる高齢者についてであり、保育と介護を関連付けていく発想は認めなれなかった。(2)対比の視点の探索研究では、(1)歯の生え方と咀嚼・嚥下による「離乳食」と「介護食」ユニバーサルデザイン比較、(2)排せつとおむつによる乳児用おむつと高齢者用おむつの市場商品における認識比較、(3)子どもの「誤飲」と高齢者の「異食」という理解比較、(4)保育・介護制度政策サービス比較、たとえば「保育」の非定型一時預かりサービスと「介護」のデイサービス・ショートステイなどの研究視角の有用性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケア研究が盛んになっているが、保育と介護を連続体として関連づけて、ケアの受容性を理論化しようとする本研究の視点は有用であることが確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目的は、高齢者の要介護性を「負の学習」として位置づけて相対的理解を推進することにある。死生観や終末の在り方に関する研究も視野に入れて、最終年度にあたり、理論的とりまとめを行う。
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