平成22年度研究は、基礎的データの収集を主な目的とした。現在高齢者虐待相談に応じている地域包括支援センターでの相談受け付け状況を調査し、その実情を把握することに努めた。今回は、近畿圏2府4県への全数調査を行った。地域包括支援センターでは、現在の民間機関と公的機関が併存しており、同一の業務を採り行っている。また、民間機関の課題と公的機関の課題を比較対照することによって公的機関・民間機関の相互の利点を補完する新しい取り組みを模索する必要性があると考えた。また、高齢者の中間所得層を対象とした基礎調査においては、協力研究所である大阪彩都研究所との、具体的な調査規模や調査対象等の打ち合わせを行うと同時に、現在成年後見事務を採り行っている司法書士などとのヒヤリング調査も行った。今年度は、金融機関への調査研究を実施する前段階でのやり取りに終わり、次年度への調査へと移行していきたい。 この間、高齢者への権利擁護事業を推進するにあたって、信託銀行などが成年後見制度に歩み寄る姿勢がみられるなど、財産管理事務にかかわる民間機関の役割が前進した。このことは、今日までの家庭裁判所での管理は、事後報告を中心としての対応であったため、成年後見人の財産管理実務に関する限界を有してきた。実際に司法書士や社会福祉士等が行う成年後見実務に関して被成年後見人の財産を成年後見人が侵害するという事件なども表面化しており、これらの問題をなくすために、巨額の資産を信託銀行などが保護し、家庭裁判所との連携のもと取組が展開してきた。
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