研究概要 |
本研究は、肢体不自由者の中で最も増えると予測される片麻痺者を被験者とし、彼ら・彼女らの身体特性データからADLに適用できる衣服設計理論の構築を日指すものである。本年度は、片麻痺者の体型に関するデータベースの構築を図るための基礎的調査研究を行った。 1. 片麻痺者に対する生活環境調査の実施 兵庫県下に在住する片麻痺者61名に対して生活環境に関するアンケート調査を実施し次の諸点が得られた。 1-1. 上位・下衣の選択ポイント:デザインでは、「かぶり式、前開き」、素材では、第一に温熱感(吸汗・速乾性、保温性)が要求され、次いで肌に対する触感(軽さ、伸縮性)があげられた。 1-2. 衣服に不自由を感じる点:ファスナーに関しては、引き手が小さいと使いにくく,箱に入れられない等の不満を示していた。ボタンに関しては、袖口のボタンや糸足の短いボタンに扱いにくさを感じていた。 1-3. 欲しい衣服:普段着、改まった場所への衣服があげられた。服種としては、男性はジャケット、女性はパンツを要望していた。 2. 肢体不自由者に対しての三次元人体計測の実施 健常者の統計量や左右対称性を前提としている三次元人体計測器は、肢体不自由者に適用できない現状がある。対応不可の現状把握のため、片麻痺被験者5名に対して三次元人体計測器を用いて計測を実施し次の諸点が得られた。 2-1. 計測手法:「ランドマーク付け」と「採寸」作業で誤差が生じるため、「手動ランドマーク付け」と「手動採寸」の工程がさらに必要となった。 2-2. 採寸できない項日:チェスト・バスト囲、ウエスト囲、股上前後長が計測不可であった。患側腕が体幹に接触している場合は計測不可であった。以上の研究結果を踏まえて、目的達成のために研究を遂行する。
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