暑熱環境で密閉型衣服を着用して活動する場合、人体に加わる熱ストレスの軽減が最重要課題であり、密閉型衣服の温熱的快適性を改善するために簡易で安価な冷却装置が求められている。その開発指針を得るため、第一段階としてモデル装置を作成し、その冷却特性を評価した。 文献および市場調査をもとに、体温調節および行動判断を担う部位を保護する観点から、頭部・頸部・上半身を冷却する簡易な方法として水冷式を採用した。水冷式の基本的な冷却特性を把握するために、モデル装置として、ポリエステルニットとナイロンチュールの間にシリコンチューブを縫いつけた水冷シートを作成した。氷水による冷却を想定して5℃の冷水を恒温水槽からチューブに循環させ、PC水冷ポンプを12V電池で駆動させて流量を設定した。熱物性測定装置サーモラバII(カトーテックKES-F7)による消費電力の測定から水冷シートの熱特性を評価した。チユーブの配置密度、水循環経路、流量の違いが水冷シートの冷却力に及ぼす効果を明らかにした。水冷シートを皮膚に密着させる場合、衣服の上に装着する場合等、水冷シートの装着方法が冷却効果に及ぼす影響も検討した。また、頭部・頸部、胸部、上腕部の冷却に要する熱量の試算から、冷却力が限定されるモデル装置では頭部・頸部の冷却が効率的であることを確認した。 モデル装置の冷却特性について基礎データが得られたことから、試作型冷却装置を設計するための方向性が示された。
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