高取町土佐街道における伝統的木造住宅の維持管理の現状と課題について検討した。具体的な方法は以下のとおりである。まず、住宅の外観調査を行い、築年数の経た住宅、補修や改修、建替えを行った住宅などを選定し、30軒を対象に居住者にヒアリング調査および住宅の平面採取を行った。 得られた結果は以下のとおりである。回答者は48歳から84歳であり、単身世帯から三世帯同居と様々であった。住宅の建築年は1860年から2006年であり、築後100年前後の住宅が16軒であった。対象家屋の約半数は開口部に連子格子のついた、つし二階建てであり、母屋は四間取りが多い。日頃の掃除について、掃除機中心のやり方に変化してきているものの、高齢居住者の場合、慣れや簡易にできるという理由から掃き掃除や水拭きが行われている。住宅の維持管理において、建具の入れ替えや祭りなどの季節の行事、講の当屋が重要なきっかけになっていて、障子の貼り替え、畳表の交換、建具まわりの手入れ、さらには外壁の塗り替えなどが一定のサイクルで行われている。また、屋根や外壁の補修はここ30年間に約半数の住宅で行われており、経年による傷みとともに、台風や震災など自然災害もきっかけとなっている。住宅の改修は、家族構成や高齢化による生活スタイルの変化、設備類の故障と高機能設備の登場、下水道の整備などにより行われている。母屋の建替えはこの50年間に9軒で行われていた。建替えに際し、先祖からの家を守り、次の代へつないでいくことを強く意識している例もみられた。そして、居住者の高齢化や同居家族の減少、大工・各種職人の減少、住宅の維持管理にかかる経済的な負担において、課題がみられた。
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