(研究目的)本研究は、犯罪の起こりにくい戸建住宅地のあり方を、配置構成に焦点を当てて追究するものである。戸建住宅 の防犯対策といえば、個々の住宅の堅固性を追究するか、もしくは欧米型のゲーテッド・コミュニティに代表されるように住宅地全体を「要塞化」する手法など、二極化したアプローチが注目されている。そこで本年度の研究では、住宅自体は防犯住宅として一定の防犯配慮がされている住宅地で、道路と敷地との境界に塀などの囲障が設置されていない、もしくは軽微な囲障が施されたいわゆる「オープン外構」型の住宅地に注目し、その住宅地とは対照的な既存住宅地との比較において、オープン外構型住宅地の防犯性評価を行うこととした。 (調査方法)住宅侵入盗の認知件数が全国一多い愛知県内の防犯カメラ付き開放型外構3住宅地と、特別な防犯配慮はない閉鎖型外構1住宅地で留置き式質問紙調査を実施した。調査期間は、2012年11月~12月。全体の配布数は481票、回収数は218票、回収率は45.3%であった。 (成果)同じ【開放型】でも、防犯対策の充実度の違いから、犯罪への不安感、外構の開放性維持に対する要望が異なることがわかった。また、玄関のアクセス方向や外構形態の違いにより視認性、プライバシー意識、犯罪不安感に差が見られた。【閉鎖型】と【開放型】の比較では、開発年数や居住者年齢による違いも見られたが、【閉鎖型】の防犯意識の高さがみられた。設備だけでなく、相互監視性の高さや近隣と連携した自主的な防犯行動が見られた。住宅地のオープンな外構の防犯性は、計画時に住宅の位置や防犯設備を合わせて検討することにより効果が上がると考えられる。防犯設備などのハード面とコミュニティ形成などのソフト面の両面から住宅地全体の防犯性を向上させることの重要性が示唆された。また経年に伴う外構の開放性の維持管理の重要性についても示唆された。
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