本研究は、衣服の動作適応性評価方法を確立し、将来的に、より広範囲の着用者の満足を得られるユニバーサルデザインの視点からの衣服設計データベース構築を目指すものである。 平成22年度は、衣服による拘束が大きい場合に起こる動作変化を含めて負担の程度を筋活動量でとらえるための新たな被験筋を見出すことを目的として、予備的かつ基礎的な着脱実験を65歳以上の高齢者と20歳代の若者各3名を対象に実施した。そこでの被験筋は、これまで申請者らが着脱動作実験で結果を得ている右三角筋に加えて、左三角筋と体幹部の姿勢変化に対応するための広背筋を測定部位とした。また、実験服は素材間の摩擦以外の要因を極力減らすために、個人の寸法・形態に適合したものを制作した。官能評価、表面筋電図、関節角度の測定と、2方向から撮影したビデオから動作分析(動作時間、四肢および体幹の動き)を行い、衣服による動作拘束を定量的に評価するための被験の特定を試みた。その結果、ある程度の傾向を見い出せてはいるものの、震災による影響で実験環境が整わないことから3月に予定していた追実験が実施できず、定量評価に用いるにはデータ数が不足している状況である。このため、平成23年度に同じ条件で追実験を行い、筋電図による筋負担の定量評価につなげていく予定である。
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