研究概要 |
本研究は,高齢化社会を快適に過ごすために,臭いが吸着しやすい繊維製品に消臭・抗菌機能を持たせ,かつ実用面から各種の色を有し,堅ろう性の高い消臭・抗菌機能染色布の開発と,ガスクロマトグラフ(GC)法による消臭機構の解明を目的とする.本年度は,購入した炎光光度検出器(FPD)とGC solutionを既存の島津製GCに装着し,消臭機構解明の条件確立と,検知管法による消臭試験を行った.得られた結果を下記に報告する. 5種の直接染料と銅塩で媒染染色したシルケット加工ブロード綿布を用い,臭い物質のエタンチオール(ET)に対する消臭機構を,GC法により検討した.テドラーバッグに試料布を入れ,ET注入後,時間経過とともに,バッグ内のETは減少し,分解生成物のジエチルジスルフィドが増加したが,消臭速度は染料により異なった.染料構造,染料が持つ官能基,染着量,含銅量,染料と銅の結合様式等が関係していると考えられる.含銅反応染料C.I.Reactive Blue 237と銅塩を用い,媒染染色した染料濃度の異なるシルケット加工メリヤス綿布について,検知管法によりETの繰り返し消臭を行った.すべての染色布で,繰り返しにより消臭速度は減少した.染着量が増すと消臭速度の減少率は小さくなった.直接染料C.I.Direct Blue 1と銅塩で媒染染色したシルケット加工ブロード綿布について,検知管法により同様に消臭実験を行い,綿布と結合した銅(pre型Cu)と,染料と結合した銅(dye+aft型Cu)の消臭速度と消臭機構への関与について検討した.pre型CuはETに対する結合力が弱く,分解触媒として働き,dye+aft型CuはETに対する結合力が強く,Cu量も多いためETの分解量が増した.今後,消臭の持続性を高める条件,及び消臭機構を詳しく検討することで,身の回りの臭いの除去方法を構築できると考える.
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