研究課題/領域番号 |
22500727
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
研究代表者 |
懸橋 理枝 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 研究員 (70294874)
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研究分担者 |
東海 直治 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 研究員 (40416300)
山村 伸吾 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 研究員 (00416299)
前田 悠 九州大学, 理学研究科, 名誉教授 (20022626)
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キーワード | 界面活性剤 / アミドアミンオキシド / 臨界ミセル濃度 / 可溶化 / ゲル化 / 水素結合 / 分子間相互作用 / スペーサー |
研究概要 |
洗浄力や可溶化能など界面活性剤の機能向上を目指し、広い濃度条件で溶解度の高いアミンオキシド系界面活性剤に水素結合部位としてアミド基を導入したアミドアミンオキシドをターゲットに、分子間水素結合を誘起する部位がナノ構造形成に及ぼす影響及び機能発現との関係を明らかにすることを研究目的とした。今回、アミド基の数、アミド基-アミンオキシド基間のスペーサー長、アミド基の配列を変化させ、臨界ミセル濃度(cmc)や表面物性、起泡性、ゲル化挙動、可溶化能、洗浄力について調べた結果、以下のことが明らかとなった。(1)アミド基数の増加に伴いcmcが増加したことから、アミド基数の増加は界面活性剤分子の親水性増加に対応することがわかった。これはスペーサー長に依らなかった。(2)アミド基一アミンオキシド基間のスペーサー長は、アミド基が極性基として作用するか、疎水鎖中に組み込まれるかを決める重要な因子であることが分かった。スペーサー長が短いと(炭化水素鎖長3程度)アミド基は極性基として働き、十分長い場合(6程度)疎水鎖中に組み込まれることがわかった。後者では、分子間水素結合はミセルコア中で形成され、特に構造形成には有効であった。(3)スペーサー長が短くアミド基数が多い場合、極性基は非常に嵩高くなると予想される。このような構造を有する試料の泡安定性が著しく低下した実験結果もこの予想を支持する。(3)アミド基を単純な繰り返し配列ではなく、分子間水素結合がより形成されやすい並び方に制御し、さらにミセルコア中に配置することで、ゲル化能は著しく向上した。同じアミド基の構造でスペーサー長を短くすると、粘度は大きく低下した。(4)分子間水素結合が強いと、ミセル中への油溶性物質の可溶化を妨げる傾向にあることが示唆された。(5)人工汚染布を用いた洗浄力評価では、分子間水素結合形成は顕著な向上効果を示さなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素結合部位としてアミド基を導入したアミドアミンオキシド系界面活性剤では、その構造形成や溶液物性に影響すると考えられる多くの検討要因がある。今回、スペーサー長が分子間水素結合形成に特に重要であることが分かり、検討項目をある程度限定することができるようになったことが研究を進める上で有効であった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、界面活性剤の化学構造により分子間相互作用(特に水素結合)を利用したナノ構造形成制御のための指針が得られたが、洗浄力への顕著な向上効果が今のところ見られていない。これまでは、油汚れや粒子汚れなど複数の汚れ成分を含む一般的な人工汚染布を用いて洗浄力評価を行ってきたが、水素結合に基づくナノ構造形成を洗浄力に利用する場合、汚れ成分を油に限定した系でスクリーニングを行う方がよいのではないかと考えている。そのため、油のみを汚れとする汚染布を新たに作成し、洗浄力評価を行う。台所用洗剤を想定したガラス板を用いた洗浄力についても評価する予定である。また、実際の洗浄では混合系で用いるのが一般的であるため、オレイン酸ナトリウムやドデシル硫酸ナトンウムなど市販洗剤の成分と混合した系についても基礎溶液物性測定、可溶化能、洗浄力評価を行う予定である。
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