1. ソバ納豆およびソバ味噌の一般的性質 ソバ納豆の総蛋白含量は醗酵時間の経過に伴い低下した。一方、味噌の色は、醗酵中、全体に黄色味を帯びるようになり、時間経過と共に、pHの低下とTTA値の増加が見られた。還元糖では、納豆中のフルクトース、グルコース、マルトースは醗酵時間の経過と共に減少、ラクトースとシュークロースは48時間後には増加した。味噌のマルトースは減少したが、ラクトースとグルコースは増加した。また、GABAは納豆、味噌ともに醗酵後に2-3倍に増加し、総アミノ酸量も納豆では減少、味噌では増加傾向が見られた。 2. 醗酵中のソバ納豆ならびにソバ味噌のアレルゲン蛋白質の変化について 発芽ソバを用いた納豆と味噌では、いずれも醗酵期間中に、特に高分子量のアルブミンとグロブリン蛋白質が分解され低分子化していた。最終的には低分子量蛋白質が増加したが、IgEイムノブロッテイングからは、ソバアレルゲンとされる蛋白質における反応性は非常に低下し、発芽ソバが低アレルゲンあるいはノンアレルゲン性を示す納豆や味噌の調製に有効利用できると考えられた。 3. ソバ納豆およびソバ味噌の食味評価 一般的に、納豆の「ネバネバ感」のテクスチャーに関係するポリグルタミン酸ナトリウムが、本研究でのソバ納豆でも生成されていた。しかし、市販の大豆納豆と比較した官能評価では、特別気になる味や香りはなくプレーンな味わいであると評価された。従って、従来の市販品に見られる納豆独等の香りや味などを嫌っていた消費者でもあっても、発芽ソバ納豆であれば最終製品として受け入れられる可能性が期待された。また、ソバ味噌でも市販の大豆味噌と比較した官能評価では、多数の項目において有意差は認められなかった上に、うまみ、酸味、甘味の項目では市販品よりも高いスコアを得た。この結果は既述のpH、TTA、アミノ酸組成などの結果に対応していた。
|