研究課題/領域番号 |
22500733
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
坂本 薫 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (20187032)
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キーワード | 砂糖 / スクロース / 粉砕 / カラメルソース / グラニュ糖 / 調理特性 |
研究概要 |
結晶性の固体の融点は特有な一定値を示し、重要な物質定数の1つである。市販のグラニュ糖(スクロース結晶)の純度は99.9%以上と試薬並みであり、日常的には品質に差があるという認識なく使用されている。しかし現実には、グラニュ糖には融点の異なるものがある。 砂糖は我々の食生活のあらゆる場面で使用される重要な食品であるが、加熱熔融時の着色状況や熔融状況に差があるため、食品加工上の操作性や食味に大きな差異が生じる。これらの差異について、「砂糖の調理特性に影響する新因子」としてその機序を明らかにし、これらの現象の原因を探ることにより、我々の食生活および食品業界の品質管理に役立つデータを得ることがこの研究の目的である。 融点の異なるグラニュ糖は、異なる加熱過程を経て崩壊、熔融する。結晶の粒の大きさが異なるだけで示差走査熱量分析の結果が異なることは通常では考えられないことであるが、実際に、粉砕により生じた粒度の違いがDSC分析の結果に違いをもたらすこと、市販グラニュ糖製品を篩分したものにおいてもDSC分析結果が異なることを確認した。 この粒度の違いによる食味の差を科学的に解明するために、カラメルソースを粒度の異なるスクロース結晶を用いて調製し、カラメルソースの還元糖量や色差を測定し、官能検査によりその食味に明らかな差が生じることを確認した。また、液体クロマトグラフィーにより、スクロースの分解により生成する糖を分析し、その差異に関して詳細に検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒度の異なるスクロース結晶を用いた加熱調理品における食味の差異を検討するために、まずはその差異を確認すべく飽やパンの調製を行ったが、思うような結果は得られなかった。しかしながら、カラメルソースを調製し、粒度の違いによる差異を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
スクロースが分解して生じる還元糖の測定について、詳細に検討する必要がある。還元糖の測定方法については、ソモギ・ネルソン法、ジニトロ・サリチル酸法、液体クロマトグラフィー、旋光度測定、ブリックス等を併用し、測定方法による差異を比較検討しながら用いる。一方で、分子の電子状態について検討を行い、スクロース分子の内部での結合の強さに差異があるかどうか、分子内部の結合の切れやすさに差異があるかどうかについても検討して現象の機序解明を模索する。
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