研究概要 |
高齢者で嚥下機能の低下が好発することは知られている。このような場合には、水でむせることが良く起こるため、水にとろみをつけて対応する。しかし、とろみの客観的な測定方法には諸説あるため、高齢者を対象とした検討を行った。 デイケアの高齢者を対象に、飲み込みやすいとろみの程度の限界を調査し、キサンタンガム系のとろみ調整食品で1~1.5%程度であることを報告した(出戸綾子、栢下淳ほか 日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌12 197-206 2008)。本検討では、この調査結果を反映する測定方法を検討し、ずり速度50-130/Sの範囲で測定することが望ましいことを報告した(Y.Yamagata,J.Kayashita etal Food Sci Technol Res 18 363-369 2012)。 日本摂食嚥下リハビリテーション学会(会員数10000名)嚥下調整食特別委員会で策定した嚥下調整食学会分類2013とろみ、の測定方法は、先の報告を参考に、ずり速度50/Sで測定した粘度値を採用した。学会分類2013は、嚥下機能の低下した方に提供する食事ととろみの病院間連携を促進するために作成された分類である。「学会分類2013とろみ」作成には、複数のとろみ液を医療関係者で官能試験を行いながら作成し、うすいとろみ50-150mPa.S、中間のとろみ150-300mPs.S、濃いとろみ300-500mPa.S とされた。官能試験結果の経過は、宇山らにより報告された(宇山理紗、栢下淳ほか 日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌18 13-21 2014)。また学会分類2013とろみの策定経緯の詳細は、臨床栄養に報告した(栢下淳 臨床栄養124(5) 544-550 2014)。 以上、本科研で検討した結果は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の学会分類の際にも用いられたことから、十分な成であったと考えられる。
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