研究課題/領域番号 |
22500739
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
森高 初恵 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (40220074)
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キーワード | 食塊 / 老化 / 嚥下 / 咀嚼 / テクスチャー特性 / 官能評価 / 粘性率 |
研究概要 |
食塊はずり速度が変化すると、テクスチャーモディファイアーの種類や濃度によって力学特性が大きく変化する。この変化は主に食品を構成する食材の構造、形状や大きさによって異なる。本年度は寒天ゲルを分散した水、馬鈴薯澱粉、グアーガムおよびキサンタンガムの固体分散媒の食塊のみかけの粘性率および咽頭部の食塊の移動速度に及ぼす分散媒濃度の影響について検討した。また、咽頭部の食塊の移動速度から食塊のずり速度とずり応力の関係を定量的に検討した。 馬鈴薯澱粉分散試料について、食塊のみかけの粘性率は、ゾル濃度に関わらず水分散試料とほぼ同程度の粘性率を示した。馬鈴薯澱粉分散試料の咽頭部での食塊の移動速度は、濃度0w/w%と5.0w/w%の間で一部有意差が認められたが、他の濃度間における有意差は認められず、分散媒の濃度が移動速度に及ぼす影響は小さかった。グアーガムおよびキサンタンガム分散媒試料については、低濃度では固形物が添加されるとみかけの粘性率が高くなり、咀嚼された固形物が粘性率に影響を及ぼした。高濃度では固形物の影響は小さかった。グアーガムとキサンタンガム分散媒試料の食塊の移動速度は、分散媒の濃度が高くなるに従い、最大移動速度が遅くなる傾向が認められた。これは、食塊のみかけの粘性率、凝集性および付着性が高くなることが影響したためと推察された。咽頭部での食塊の移動速度と食塊のみかけの粘性率からずり速度とずり応力を算出した結果、5回咀嚼の水分散媒試料のずり速度が最も速く約70sec^<-1>であり、低濃度の馬鈴薯澱粉、グアーガムおよびキサンタンガム分散媒試料では約60sec^<-1>、高濃度ではグアーガムとキサンタンガムで約30sec^<-1>、馬鈴薯澱粉で約45sec^<-1>であった。咽頭部においてのずり速度とずり応力は、馬鈴薯澱粉では速いずり速度で低いずり応力であり、グアーガムとキサンタンガムでは遅いずり速度で高いずり応力であった。咽頭部でのずり速度の範囲は口腔内のずり速度よりも狭く、ずり応力の範囲は口腔内よりも広いことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究はテクスチャーモディファイアーを用いたモデル試料により、咀嚼・嚥下機能に応じた安全な食品の力学特性について究明することを目的としている。昨年度までに、テクスチャーモディファイアーの咀嚼過程に及ぼす影響について検討することができ、さらに咽頭部における最大速度についても測定値を得ている。また、これらの結果から、テクスチャーモディファイアーの咽頭部でのずり速度とずり応力の関係についても情報を得ることができた。これらの情報は、咀嚼・嚥下機能に応じた安全な食品の力学特性がいかにあるべきかを示唆しており、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本申請研究課題は平成24年度で終了となる。これまで、おおむね順調に研究は進展しているため、平成24年度もこれまでの方法で同様に研究を重ねる予定である。
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