研究概要 |
鶏肉は,安価で栄養的にも優れているが,ハムやソーセージなどの加工食品の原料としては,加工特性の乏しさから豚肉のように利用されておらず,その特性を広げることが望まれているタンパク質源である。申請者は,鶏肉にメイラード反応を用いて糖修飾すると低イオン強度溶液への可溶化・熱安定性の増大・抗酸化性の獲得などの機能改変が生じることを認めた。本研究では,ランダムセントロイド最適化法を用いて抗酸化能を中心とした機能性を十分発揮できる糖種・量・反応条件(温度・湿度・時間・pH)を探り当て,鶏肉の食品素材としての加工特性を広げる。このことで鶏肉より嚥下訓練食・流動食・抗酸化能を唱った特定保健用食品の開発が可能となる。 平成22年度は,上記の目的に従って,鶏肉より筋原線維を調製し,糖としてマルトースを選び,ランダムセントロイド最適化法を用いて,温度(40-70℃)・相対湿度(25-45%)・反応時間(24-48h)・筋原線維とマルトースの重量比(1:2-8),pH(6-9)を条件として選び,電子スピン共鳴(ESR)測定時の試料溶液への溶解度を指標として,最も抗酸化効果を発揮する糖化筋原線維調製条件を検索した。14回の実験条件が示され,検討を行った結果,温度63.3℃・相対湿度39.2%・反応時間34.53h・筋原線維とマルトースの重量比1:4.53・pH7.57の時,スーパーオキサイドラジカルに対する抗酸化能の指標であるsuperoxide anion radical scavenging activityが,541±74units of superoxide dismutase/g of proteinを示す糖化筋原線維の調製に成功した。この値は,抗酸化物質であるポリフェノールを多く持つ乾燥デラウエアと同程度の値であった。
|