本研究課題では、和食のみならず広く減塩食のおいしさを向上させることを目指して、チキン・ブイヨンによる減塩効果について検討してきた。これまで、チキン・ブイヨンには、プロビット法で確認できる顕著な塩味増強効果はなかったが、二点比較法では塩分濃度0.7%で塩味増強傾向が認められ、さらに、おいしさ向上効果を確認した。本年度は、この減塩効果に寄与する材料を検討する目的で、20歳代の女性を被験者とし、チキン・ブイヨン、鶏のみのブイヨン、野菜のみのブイヨンを用いて官能評価を実施した。各試料の塩分濃度を0.62~1.00%の5段階に調整後、それぞれ0.80%NaCl溶液と組にして60℃で提供し、各組より塩味が強いもの、塩味の強さが好ましいものを回答してもらった。また各試料、被験者にノーズクリップ(NC)を着用の上、同様に検査してもらった。 プロビット解析ならびに二点比較法の両側検定の結果、NCの有無に関わらずチキン・ブイヨンに塩味増強傾向があることが確認された。これは、野菜と鶏の呈味成分の相互作用によると考えられた。また野菜のみのブイヨンは、塩分濃度の0.70~1.00%の範囲でプロビット解析したところ、有意な塩味抑制効果がみられた。この効果は、野菜のにおいに起因すると考えられた。さらに、チキン・ブイヨンには低塩味域でおいしさ向上効果が認められたが、この効果に野菜由来の呈味成分が関与しないことも明らかとなった。 また、チキン・ブイヨンは、昆布だし、鰹だし等に比べて油分が多い。そこでチキン・ブイヨンを4℃に冷却し油脂を固化させて除去したものを調製し(油脂なし試料)、先述のとおり官能評価を実施した。その結果、油脂なし試料では、チキン・ブイヨンの減塩効果が消失した。以上のことから、チキン・ブイヨンに含まれる油脂も減塩効果に寄与している可能性が示された。
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