研究概要 |
糖質化合物としてスクロースおよびその構成分子の一つであるグルコースを、そして食品中に存在する抗酸化成分としてアスコルビン酸を用いたモデル系にて検討を行った。加熱によるアスコルビン酸の活性低下をアゾ化合物由来のペルオキシルラジカルに対する捕捉活性および処理後に残存する総アスコルビン酸量と還元型アスコルビン酸量をHPLCにより定量した結果を指標として評価した。このモデル系における加熱方法は、外部加熱(湿式加熱)および内部加熱(誘電加熱、電子レンジ加熱)である。湿式加熱(50、100、150、200℃)は各時間(0,10,20,30分)の処理、そして電子レンジ加熱は500wで0,30,60,90秒処理とした。 その結果、スクロース・グルコースとも湿式加熱および電子レンジ加熱により分解されることに起因するアスコルビン酸の減少度合を抑制することが判明した。ラジカル捕捉活性と総アスコルビン酸量は同じような挙動を示し、両者には高い相関性が見られた。還元型アスコルビン酸量は長時間の加熱では残存しなかった。スクロースとグルコースとの比較では、この減少抑制効果に大きな差は見られなかった。またペルオキシルラジカル以外のスーパーオキシドアニオンやヒドロキシルラジカルに対する捕捉活性も同様にスクロースおよびグルコースによる活性減少抑制効果が見られた。 このように、調理加工の現場において、糖質化合物が共存することで、食材が有する機能性の損失を抑制する可能性が示唆された。今後、実際の調理加工品に適応し評価を重ねていく所存である。
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