研究課題/領域番号 |
22500746
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
渕上 倫子 福山大学, 生命工学部, 教授 (60079241)
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研究分担者 |
桑田 寛子 福山大学, 生命工学部, 助手 (20509252)
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キーワード | ペクチン / テクスチャー / 加熱処理 / 高圧力処理 / カリン / イチゴ / リンゴ / 日向夏 |
研究概要 |
I.加熱処理による野菜・果実の物性変化とペクチン質の関係 生カリンは非常に硬い。なぜ煮熟により軟化するかカリンを生および煮熟後、希塩酸、続いて酢酸塩緩衝液に浸漬し、ペクチン質をエステル化度の違いにより分別抽出した。また、組織構造の変化を観察した。カリンは石細胞や食物繊維を多く含むため、生の果肉は非常に硬いが、15分煮熟で中層のペクチン質が溶出して細胞壁が分離し、軟化した。カリンのペクチンのエステル化度は非常に高く、高メトキシルペクチンがβ-脱離により分解して煮汁中に溶出し、軟化したものと思われる。 II高圧処理による果実の物性変化とペクチン質の関係 1.イチゴ、リンゴなどを高圧処理するとなぜ軟化するか イチゴ、リンゴを切断後、真空包装し、500MPa、30分間高圧力処理、または100℃で10分間加熱処理した。イチゴは低分子量の水可溶性ペクチンが非常に多く、高圧・加熱処理により高メトキシルペクチンが減少し、組織が著しく軟化した。リンゴの水可溶性ペクチンはイチゴより少なく、低エステル化度のペクチンが比較的多かった。そのため、高圧・加熱処理による軟化の程度がイチゴより低かった。リンゴのpHが4付近であったため、ペクチンがβ-脱離でなく加水分解により低分子化し、軟化したものと思われる。 2.各種柑橘類からフレッシュな香りの高圧マーマレードを作る方法の確立日向夏の外果皮をスライスし、中果皮・内果皮・果肉は磨砕しpH2.7のクエン酸溶液に24時間浸漬した。これに最終糖度50%となるように蔗糖を添加し、500MPaで30分間高圧力処理、または100℃で10分間加熱処理してマーマレードを作製した。果皮をクエン酸に浸漬すると軟化が促進し、細胞壁にゆるみが生じた。マーマレードの粘弾性は高圧・加熱処理により大差なかった。高圧力処理したほうが加熱処理したものよりゼリー部分のナリンギン量が少なく、フレッシュな香りも維持しており、官能評価の総合評価が高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カリン、イチゴ、リンゴ、日向夏については、一定の成果が得られたが、不備な点について、平成24年度に追加実験を行い、論文にする予定である。果実については、収穫時期が限られるため、成果を得るのに数年を要する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、野菜・果実を加熱、乾燥、高圧処理したときの物性変化とペクチンの関係を解明することである。今まで、「加熱」については、金糸瓜はなぜそうめん状に剥離するか、生カリンは非常に硬い。なぜ煮熟により軟化するか?水道水の違いによりジャガイモの軟化度が異なるのはなぜ?「高圧処理」ではイチゴ、リンゴなどを高圧処理するとなぜ軟化するか?各種柑橘類からフレッシュな香りの高圧マーマレードを作る方法の確立などについて検討してきた。今後は、これらの研究成果を論文とする。また、「乾燥」について、ヤマクラゲ(乾燥ステムレタス)は切干大根と異なり、なぜ歯触りがよいか?モラヤ(凍結乾燥ジャガイモ)の物性と微細構造について検討する予定である。
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