最終年度となる本年は、これまでに調査の遅れていた地区の伝統海藻食の調査を行うとともに、これまでに発掘することができた伝統的な海藻食を現代食に応用するための試作を行ってきた。また、抗炎症作用が期待できる褐藻類に含まれるクロロフィルc2について、調理による影響を明らかにするために分光光度計による定量方法の検討を行なった。 調査地区の一つである長崎平戸・対馬地区においては、地元漁師および一般家庭などの協力を得てカジメの伝統食「味噌漬け、糠漬け」について調査を行なうことができた。カジメの属する褐藻類は硬いものが多く、一般的には刻んで味噌汁の具などに用いることが多く、漬物にするという調理方法はきわめて珍しい。生の海藻を用いることから、現地でも流通する時期が限られている。またカジメの採集量が減少していること、作る人が少なくなっていることなどから、ごく限られた地域で食されており、長崎県内でも地域によっては、特に若い世代においては知らない人も多い伝統食である。 「漬ける」という調理方法は味噌だけでなく粕、麹など様々な漬け床で応用することにより現代食に有効に利用することができると考え、現在この伝統食にならい他の海藻を味噌漬けなど現代食に向く漬物に工夫するように取り組んでいるところである。 また、紅藻類であるコトジツノマタを用いた千葉県東部に伝わる「海草」やエゴノリを用いた佐渡の「えごねり」博多の「おきゅうと」などの調理方法とテクスチャーの違いなどの検討を行った。 さらに、抗炎症作用を持つことが明らかとなった褐藻類中のクロロフィルc2について、アセトンを用いた抽出および吸光度による測定法について検討した。
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