本研究は米をはじめとする穀物から蛋白質・アレルゲンのコンタミなく、高濃度の糖類やアミノ酸を回収するための基盤技術を開発することを目的とする。本年度は、米糖化液を作製する際に、アミラーゼにプロテアーゼを併用することでアミノ酸を回収できること、米糖化液を遠心することでほとんどの蛋白質が除去されることを確認した。また、60G程度の弱い遠心力で蛋白質を含まない透明な上層と白濁した下層に分離できることや、米の塩溶性画分を単離したものは熱を加えても沈殿しないことなどから、観察された蛋白質の除去は、単純な熱変性によるのではなく、不溶成分への吸着によることが実験結果から示唆された。これらの知見は、糖化液を低アレルゲン飲料に応用できる可能性のある成果である。並行して米の塩溶性画分に含まれる蛋白質を二次元電気泳動で展開し、主要な20個のスポットについて内部アミノ酸配列を分析することで、アレルゲンのマッピングを行った。既知のアレルゲンと併せ、いくつかのアレルゲンについては米ではじめて所在が明らかになった。これについて、アレルギー患者血清を用いた2次元ウェスタンブロッティングを実施し、個々の血清によって反応するアレルゲンが異なることを明らかにした。これにより、(個々のアレルゲンを除去した米品種を開発し、これを食品の原料に用いるよりも、)加工によって多くのアレルゲンを一度に除去することの有効性が確認された。
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