食品アレルギーは重篤な症状を引き起こすことがあるが、効果的な治療法はほとんどなく、アレルギー患者はアレルゲンを除去する食事を余儀なくされているのが現状である。そこで、信頼できる原理に基づく、アレルゲンのコンタミを最小化した食品の開発が求められている。本研究は米をはじめとする穀物から蛋白質・アレルゲンのコンタミなく、高濃度の糖類やアミノ酸を回収するための基盤技術を開発することを目的とする。 今年度は、糊化した米デンプンをアミラーゼ/プロテアーゼ処理して得られた糖化液の、遠心後の上清画分の栄養性について、また、米以外の穀物等を原料に同様の処理を行った場合に得られる糖化液との違いについて検討した。米を原料とした場合には、上清画分にアレルゲンや蛋白質はほとんど含まれないが、トリプトファン、スレオニン、リジン、バリン、メチオニン、ロイシン、フェニルアラニン、イソロイシン、ヒスチジンなどの必須アミノ酸がバランス良く、それぞれ理論値の3~5割程度の高収率で回収されることが示された。アミノ酸と可溶性ペプチドの総量を併せると、原料に含まれる全蛋白質から6割程度が回収される。一方、ダイズ、コムギ、ソバなどを原料として糊化後のアミラーゼ/プロテアーゼ処理を行った場合には、1)遠心後の上清を二次元電気泳動で解析するとアレルゲンや蛋白質が顕著に低減するものの、2)糖、アミノ酸の回収率は米には及ばないこと、が明らかになった。 以上のことから、3年間にわたる研究期間で「蛋白質・アレルゲンを混入させずアミノ酸・単糖類を効率的に回収する加工法」が開発され、米が最適な原料であることが示された。また、研究過程で明らかになったメカニズムが、製パン性などの加工技術開発にも利用できる知見が得られた。本研究成果をもとに米粉を原料とした新規食品の開発・実用化の促進、および米粉の需要拡大への貢献が期待される。
|