研究概要 |
【目的】Siは植物生理学的研究が多く、人に関する例は少ない。本研究はアジア地域住民のSiのバックグランド・データの構築を目的とする。本年度は、1990年代から2000年初期の日中韓食事調査の飲料水中のSi、Ca、Mg、P濃度を測定し、食事摂取量に対する影響を検討した。【方法】各家庭の飲料水は食事調査時に50mlポリ瓶で採取された。調査対象は国内31地域691検体、中国は16地域501検体、韓国は4地域105検体、タイ1地域52検体であるが、検討対象は1地域5検体以上の地域とした。Si、Ca、Mg、Pの4元素の測定は発光分光分析法(iCAP6500、Thermo Scientific)により、同時分析法で、測定波長は2124と2516,3933と3968,2795と2852,1774と2136nmの各2波長を用い、検量線法で定量した。Pは大多数が定量下限以下のため除外した。【結果】1.90年代の日本全国調査の20都道府県29地域678検体のSi、Ca,Mg濃度の平均値(mg/L)は各11.0、15.1、3.80であり、地域別の最小と最大値は各1.3と28.7、2.0と38.2、0.7と12.5である。2.90年代中国の10地域345検体のSi、Ca,Mg濃度の平均値(mg/L)は各6.2、45.6、11.6であり、地域別の最小と最大値は各3.0と11.1、0.4と97.8、2.7と19.9である。3.90年代韓国の1地域53検体のSi、Ca,Mg濃度の平均値(mg/L)は15.8、7.3、6.1である。4.2003~5年の日中韓幼稚園調査の10幼稚園の220検体では、Si,Ca,Mg濃度の平均値(mg/L)が6.0、36.0、9.8であり、園別の最小と最大値は各々2.8と18,1、2.0と38.2、1.3と24.0である。【まとめ】日本国内の飲料水中のSiは九州と東北地方に20mg/Lを越す高濃度地域が認められた。Siの食事からの一日摂取量は数十mgと推定され、CaやMgの10分の1程度と考えられているが、本調査成績は飲料水による摂取割合が相対的に大きく、Si濃度の高い地域は50%を越す割合が示唆される。日本のSi濃度は中国よりも全体的に高く、CaとMgは中国が日本、韓国よりも高値である。
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