加齢により体筋量の減少と体脂肪量の増加が顕著にみられる高齢者では、前期高齢者と後期高齢者の供給エネルギー量を変える必要がある。しかし、エビデンスとなる論文が少なく、食事摂取基準2010年度版においても70歳以上が一括りとされ、臨床現場において管理栄養士が供給エネルギー量の設定に困難が生じている。そこで、寝たきり後期高齢者を対象に、体筋量別と栄養補給法別の適正供給エネルギー量の設定が簡単にできるツールを作成し、臨床現場でそのツールの実用性を検証することを目的とする。 75歳以上の寝たきり高齢者258名(79.0±4.7歳)、20代の健常者34名(20.5±0.9歳)、計292名(79.0±4.7歳)を対象とし、測定期間は2004年10月~2010年10月の6年間であった。間接熱量計によるREE(実測REE)、FFM、BFM、身長、体重、BMI、AC、TSFを測定した。その他、主要疾患、血液生化学検査値、実質食事摂取量を調査した。実測REEと体組成指標との相関を解析し、代謝量に影響を及ぼす因子分析を行った。さらに、数量化I類に基づき新REE算出式を導き出した。推定REEは、20代の健常者で有意に高い値を示したのに対して、実測REEは加齢に伴い低下し、特に75歳以上の寝たきり高齢者では有意な低下が認められた。また、ONからPEGに移行すると実測REEは83.4%に低下した。このことから、75歳以上の寝たきり高齢者の供給エネルギー量の算出において、実測REEの使用が最も望ましく、推定REEの使用は過剰評価となるため、HB式に代わる新REE算出式が必要である。次に、ON群では、実測REEと体重、BMI、%AMC、%TSFで、PEG群では、体重、%TSFで相関が認められた。これらの因子と実測REEの重回帰分析の結果、ON群では体重・BMI・%AMC・%TSF、PEG群では体重・%TSFの組み合わせが最も高い因子であった。以上より、数量化I類に基づき以下の新REE算出式を導き出した。ON:REE(kcaL/kg)=34.811-{0.137×現体重(kg)}-(0.127×BMI)-(0.084×%AMC)-(0.016×%TSF)、PEG:REE(kcaL/kg)=27.347-{0.244×現体重(kg)}-(0.016×%TSF)であった。
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