現在、HB式に代わる日本人用の供給エネルギー量の算出は、国立健康・栄養研究所提案の式(Ganpule式)等、各研究者により提案されつつあるが、いずれも健常者を対象とした算出式であり、実質の運用には至っていない。そのため、Harris-Benedict式(HB式)からの算出方法を80.5%の病院・施設で使用している。平成22~24年度まで得られた600症例中、20歳代健常者34名(20.5±0.8歳)、75歳以上要介護高齢者197名(85.9±5.5歳)の計231名を対象とした結果、HB式およびGanpule式は、75歳以上の要介護高齢者において、間接熱量計(メタバイン-N)と比べ有意に高い値となること、ON(経口栄養法)からPEG(胃瘻造設施術)へ移行すると低い値を示す傾向があることが明らかとなった。以上のことから、再度、回帰式を検討した。ON:kcal/kg/day = 34.833 + (0.999×性別) - (0.105×年齢)+ {0.074×身長(cm)} - {0.409×現体重(kg)}、PEG:kcal/kg/day = 59.502 + (1.940×性別) - (0.188×年齢) - {0.058×身長(cm)} - {0.480×現体重(kg)}この新たな回帰式は、ON、PEGともに、要介護1~5、年齢75~103歳、身長125~170cm、体重25~70kgの高齢者および看取りの対象者に対して適切な安静時代謝量が算出可能であると示唆された。加えて、この回帰式を病院・福祉施設の75歳以上要介護高齢者59名(86.2±6.5歳)に導入し3か月間の推移を検討した。その結果、一般病院および福祉施設の75歳以上の要介護歴6~7年、PEG施行2~3年および、中度から軽度のマラスムス型のPEMの要介護高齢者への運用は可能であることが示唆された。
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