研究概要 |
食品成分の抗酸化作用については培養細胞を用いて多くの研究が行われてきたが、これらの研究には致命的な欠陥がある。これらの研究が酸素濃度が高い空気中で行われているためである。抗酸化剤は還元剤であり、高酸素濃度下では酸素を還元して過酸化水素を生成する。酸素濃度が空気中の1/100以下の生体内では、そのようなことはない。抗酸化剤がガン細胞の細胞死を起こすというのはほとんど全てこの過酸化水素によるものである。また、抗酸化物質のほとんどは生体異物であり、ほとんど吸収されないか、されても迅速に代謝されるため生体内の濃度は1μMのオーダーであり、生理的なビタミンCやEに遠く及ばない。以上から抗酸化剤としての食品成分は無意味であると考えられる。この研究はProc. Natl. Acad. Sci. USA, 109, No. 30, E2028 (Letter to the Editor, On-line only), doi: 10.1073/pnas.1205916109 (2012)に発表した。 我々は長年、酸化ストレスに関する研究を四塩化炭素中毒をモデルとして行ってきた。四塩化炭素は投与後1.5時間で肝臓での濃度は最高になり、その後急速に消失するにもかかわらず、48時間まで肝臓の壊死は拡大する。もし四塩化炭素による障害が四塩化炭素から発生するラジカルによるものであれば、その発生はすぐにやむことから、なぜ長期間にわたって細胞死が継続するのか謎であった。以前からラジカル反応によってKupffer細胞が活性化され、Kupffer細胞から放出されるサイトカイン類によって炎症が持続するという説がある。我々はこの仮説を、Kupffer細胞が枯渇しているNucling欠損マウスを用いて証明した。この研究は、Biol. Pharm. Bull., 35,980-983 (2012)に発表した。
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