今や、国民病とも言われるメタボリックシンドロ-ム(MetS)の予防と治療は、国民的焦眉の課題である。本研究では、奈良県健康づくりセンターの健康診断受診者において、MetSと診断され同意が得られた対象者30例に対し、エネルギー量とPFC比率の調整を基本とした3ヶ月間の栄養指導を実施し、開始時と3カ月後に身体計測、臨床検査、食物摂取頻度調査、血漿コレステロールエステル(CE)画分の脂肪酸組成分析を行い、MetS改善おける有効な栄養指導について検討した。 栄養指導3カ月後には開始時に比べ、腹囲、BMI、TG、血糖値の有意な減少がみられた。栄養素摂取状況においては、エネルギー摂取量、脂質摂取量、たんぱく質摂取量の有意な減少がみられた。また、Δ9desaturase(D) Index(16:1n-7/16:0) が有意に減少し、D5D Indexは有意に上昇した。Metsからの改善は、5例であったが、検査項目において基準値以内になった例が、脂質異常症では23例中12例、高血圧では28例中5例、血糖値では18例中3例、腹囲の減少が30例中20例にみられた。 腹囲とΔ9D Indexの変化量には正の相関が認められた。又、重回帰分析した結果Δ9D Indexの減少が糖質摂取量の減少と正相関することが認められた。以上の結果から、MetSの改善、特にMetSの基礎疾患である腹部肥満の改善のための栄養指導においては糖質摂取の減少を推奨することが有用であると考えられる。
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