研究概要 |
糖尿病は酸化ストレス亢進による様々な臓器のミトコンドリア機能障害が起こっている。このため、糖尿病病態のいくつかの組織では生成した活性酸素(ROS)を負に制御する機能を持ち、ミトコンドリア内膜に存在する脱共役タンパク2(UCP2)が強発現しているが、炎症や手術などの二次的ストレスがかかってもストレス応答性のUCP2の発現が起こらないためにさらなるミトコンドリア機能不全になることを見出している。そこで、食品成分や事制限によるUCP2発現の正常化(誘導法)を検討し、糖尿病を基礎疾患に持つ人のストレス応答性のUCP2発現誘導制御により、糖尿病およびその合併症リスクファクターを予防する解決法を提示できる。22年度は自然発症糖尿病ラット(OLETFラット)における心血管系酸化ストレスとUCP2の関連および食事制限による効果を検討した。 OLETFラットの29週齢および42週齢、29-42週齢の間70%の摂食制限を加えた群(制限群)を解析に用いた.対照はLETOラットとした。42週齢時の体重はOLETF群691g,制限群553g,LETO群537gと制限群ではほぼ対照群と同程度であった.ミトコンドリア由来活性酸素の生成は加齢とともに増加し、いずれの週齢の心血管においてもOLETF群ではLETO群より著明に増強していた. OLETF群はLETO群に比し心および大動脈中のUCP2が多く発現していた.制限群においては活性酸素生成およびUCP2量ともにOLETFとLETOの中間であった.大動脈のeNOS発現はOLETF群でLETO群の2倍であったが、pVASPは1/4であり明らかにNO/cGMPシグナルの機能不全が見られた.制限群はこれを正常化した.心組織内還元型チオール量に有意な差はなかった.脂質過酸化修飾タンパク(HNE:66kDa,42kDa)およびニトロチロシンはOLETF群で有意に高く、制限群で減少した.以上の知見より、糖尿病病態時の食事制限はUCP2の過剰発現を正常化することが判明し、さらなるストレスがかかってもミトコンドリアからの酸化ストレスを負に制御するための適応機構が作動するのではないかと考えられた.
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