研究課題
前年度の結果では、糖尿病病態時の食事制限はUCP2の過剰発現を正常化することが判明し、さらなるストレスがかかってもミトコンドリアからの酸化ストレスを負に制御するための適応機構が作動するのではないかと考えられることを報告した。本年度においては、糖尿病病態が鉄代謝異常による鉄沈着とその結果起こる酸化ストレスが病態の進展に関わっていることを明らかにし、除鉄療法が糖尿病治療に有効であることを明らかとした。具体的には、25週齢で糖尿病を発症するH型糖尿病ラット(OLETF)を用いて15週齢より低鉄食または28週齢から週に1回4ml瀉血する治療を行い、42週齢で犠牲死させた.体重やHbAlcなどは経時的に測定した.体重および摂食量はOLETFラット、対照のLETOラットそれぞれにおいて有意な変化はなかった.低鉄食群および瀉血群の血漿フェリチン濃度は有意に低下した.肝、腎、膵などへの組織内鉄沈着は鉄制限の両群で低下していた.OLETFラットにおいて血糖値およびHbAlcは週齢とともに増加傾向にあるが鉄制限群はそれらを有意に低下させた.その推移と並行して血漿および膵のインスリン量や線維化なども正常化した。低鉄食群では中性脂肪、LDL、PAI-1なども低下させた。漿、肝、膵の脂質過酸化物はOLETFラットで高値であり、鉄制限の両群ではその上昇を抑制した。以上の結果より、糖尿病ラットにおいて、低鉄食摂取はHbAlcや高血糖、高脂血症病態を改善することが判明した。現在、慢性C型肝炎治療で行われている瀉血治療が糖尿病にも応用されることで、特に後進国での有効な治療法として期待できることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は糖尿病を酸化ストレスと鉄代謝の側面を中心に研究し、その酸化ストレスの指標と除鉄治療が逆相関することを見出した。これにより酸化ストレスと糖尿病の関連性がより明確になった。これらの知見は、当初の研究目的を達成していると考えている。
今後は抗酸化剤の治療効果について新規の薬剤についてもその治療効果の可能性を検討していきたいと考えている。また、研究計画では非アルコール性脂肪肝炎についてのモデルも検討する予定であったが、糖尿病病態解析を深める方向で検討したいと考えている。
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