研究概要 |
本研究の目的は練製品製造工程で発生する製造ロス(L)を主原料として麹と乳酸菌の添加によりヒスタミン(Hm)や食品添加物(FA)レベルの低い発酵調味料の製造し,発酵中のもろみと最終製品の品質を調査することである.平成23年度はFA残存量の確認(1);品質向上のためのスミチームLP50(S)の添加効果(2)および最終製品の品質特性に関する実験室レベル(Lab)とテストプラントレベル(TP)で共通点と相違点(3)について調査した.得られた結果を以下に示す. 1.残存FAレベル:平成22年度の最終製品についてFA残存量の調査を実施した結果,Lを主原料にした試料ではS添加有無にかかわらずソルビン酸,リコピンおよびカプサンチン量はそれぞれ33-163ppm,2mg/L以下および51-121mg/Lであり,練製品製造時の添加量の約1/10以下℃減少していることが分かった. 2.Sの添加効果(実験室レベル):Lを赤巻きとそれ以外に選別し,細切後に等量混合した.これに食塩,水,醤油麹(A.oryzae),好塩性乳酸菌(T.halophilus)を混合し,Sを添加(4A,4B)または無添加(3A,3B)後,試料瓶に詰めて6ヶ月間25℃で発酵させた.Lの代わりにニギス魚肉を用いてSを添加(2A,2B)または無添加(1A,1B)後,同様に発酵させた.その結果,1A,1B,2Aおよび2Bでは発酵申にpHが一度低下するが,その後発酵終了まで上昇し,約6.0となった.3A,3B,4Aおよび4Bではいずれの試料も発酵4週まで4.8まで低下後,緩やかに低下し,24週では3Blを除き約4.6となった.3Bは16週から増加し,24週で5.0となった.1A,1B,2Aおよび2Bでは16週にHmが急激に増加し,24週には1400PPm以上に達した.一方,3A3B,4Aおよび4Bでは3Bを除き24週後でも20ppm以下であった.3Bは20週後に増加し,24週に600ppmに達した.各種もろみのHm量の変化はHm生成菌数の変化と対応していた.最終製品の味覚分析ではS添加有無にかかわらずL試料は酸味主体であり,ニギス魚肉試料は苦味由来のコク,うま味・塩味主体であった. 3.LabとTPでの最終製品の品質:味覚分析では原料の違いによる味のバランスの違いは両者で類似していた.Sの添加効果をみるとLabとTPでは前者の方が後者に比べて全窒素分が多い点等で相違していた.
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