研究課題/領域番号 |
22500774
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
大藏 直樹 帝京大学, 薬学部, 講師 (60349256)
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研究分担者 |
谷口 雅彦 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (00278590)
厚味 厳一 帝京大学, 薬学部, 教授 (70276608)
大石 勝隆 産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究グループ長 (50338688)
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キーワード | 血栓 / 日内変動 / 機能性食品 / 血管内皮細胞 / 血液凝固 / PAI-1 |
研究概要 |
【目的】本研究の目的は、血液凝固系の日内変動を考慮しながら血栓を予防するとされる食品を摂取することにより、血栓症を予防しようとするものである。 【本年度の成果】(1)食品中の血栓予防成分の探索 本年度は、新たに生薬種々の抽出物を探索し血液凝固反応を抑制する可能性があるものを見出した。また、初年度に血管内皮細胞(HUVEC)からのPAI-1産生を抑制する作用を見出したあした葉黄汁を分画し、PAI-1産生を抑制する成分を特定した。あした葉成分であるキサントアンゲロールBやキサントアンゲロールEがTNFα刺激によるPAI-1産生の増加を抑制する物質であることを特定した。一方、プロポリスエタノール抽出物もHUVECからのPAI-1産生を抑制したことから、市販のプロポリス成分から有効物質の探索を行ったところ、フラボノイドの一種であるクリシンが有効な化合物の一つであることが明らかとなった。(2)食品中の血栓予防物質の機能解明 あした葉から精製された数種類のキサントアンゲロールのうちキサントアンゲロールEの活性が最も強かったことから、水酸基の位置や数が活性発現に関わることがわかった。(3)機能性食品として効果的な利用法の検討 あした葉黄汁の経口投与は6週間の長期投与によりLPS投与後のマウスの血中PAI-1の上昇を抑制することができた。プロポリスやプロポリスの成分であるクリシンについては、腹腔内投与により血中PAI-1の上昇を抑制する作用が確認できた。 【意義・重要性など】血栓症の発症の日内変動に強く関わるとされるPAI-1の産生を抑制する化合物をあした葉やプロポリスなどの食品中から見出した。また、これらが実験動物への投与実験で有効であることも確認できた。従って本年度の成果により、本研究の最終目的である血液凝固系の日内変動を考慮した機能性食品の開発に向け十分な準備ができたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有効物質の探索研究では、PAI-1産生を抑制する有効物質を見出すとともに複数の物質を特定することができた。また、マウスを用いた検討で、これらの物質が腹腔内投与や経口投与により血中のPAI-1上昇を抑制する作用があることも見出し、日内変動を考慮した投与実験の準備も整った。さらに生薬成分を対象としたスクリーニングを行い、新たな抗血液凝固物質である可能性のある化合物も見出した。納豆に関連する研究は原料の調達が予定通りに進まず、保留となっている以外は、ほぼ予定通りに進行している。Journalへの発表も行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、前年度までに見出した有効な化合物がHUVECを使った評価系のPAI-1産生経路のどの部分に作用するかを調べ、血液凝固を抑制する物質の血液凝固反応経路への作用点を調べる研究を進める。また、マウスを使った実験により血液凝固系の日内変動を考慮した効果的な摂取法について検討し、摂取のタイミングを考慮した新たな機能性食品としての可能性を調べる。
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