本研究は抗ヘリコバクター・ピロリ(HP)作用を有する機能性食品の候補であるザクロ果汁について、その効果をin vitro、動物実験、ヒト投与研究を通じて実証していくことを目的としている。平成22年度においては、主にin vitro実験を行う予定であり、菌増殖抑制実験、炎症性サイトカイン抑制実験、有効分画成分の追究を行った。増殖実験においては、27臨床分離株を用い、液体培養における経時的濁度変化と3日培養後のコロニー形成能、また濃度の異なったザクロ果汁含有培地におけるコロニー形成を指標とした固体培地上の増殖実験を行った。クランベリーでは一部の株にのみ増殖抑制効果がみられたが、ザクロ果汁においてはすべての株に増殖抑制効果を示した。この結果により、予備実験から予想されたザクロ果汁の抗HP増殖抑制作用の普遍性がin vitroにおいて検証されたと考えられる。炎症性サイトカイン抑制実験においては、やはり予備実験の結果を検証し、炎症性サイトカイン産生刺激作用をもつすべての株に対し、統計学的にも有意な抑制作用をもつことを示すことができた。以上からザクロ果汁の有効性は、in vitroにおいては確立されたと考えられる。有効分画成分については、炎症性サイトカイン産生抑制作用を指標として分画を進めた。HP-20、LH-20カラムにおいてポリフェノール含有分画の一部に活性を認め、さらにODSカラムでの分画を試みたが、有効成分の溶出に乏しく、おそらく高分子ポリフェノールの関与が想定された。現在、より吸着の少ない分配カラムにて分画を試みるとともに、各分画の増殖活性を検証しており、増殖活性とサイトカイン産生抑制活性が同一の成分に由来するか否かにつき検討している
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