ビタミンD・Kは、骨に必須のビタミンであり、これらの欠乏は、骨折の重要な危険因子であることが知られている。そこで本研究では、骨折患者・骨折リスクの高い対象者における調査を行った。 施設入所高齢者を対象に、食事調査・血液検査を行ったところ、肝臓におけるビタミンK不足の指標であるPIVKA-II、骨における不足の指標であるucOCの血中濃度を測定の結果、食事摂取基準の目安量を大幅に上回る摂取にも関わらず、特にucOCに関して異常値の頻度が高く、骨は肝臓よりはるかにビタミンK不足に陥りやすいことが示唆された。また主成分分析の結果、低ビタミンD・K血症は、全般的低栄養とは独立していた。 大腿骨近部骨折患者において、血液中ビタミンD・K濃度は非常に低かった。これら患者は受傷前から低栄養状態であり、血清アルブミン濃度が、最も基本的栄養指標とされているが、現行の測定法(BCG法)は、炎症の存在時には過大評価となり、これら患者は実際にはさらに低栄養であると考えられた。しかし主成分分析の結果、低ビタミンD・K血症は、全般的低栄養とは独立したものであった。 大腿骨近位部骨折患者、施設入所高齢者のいずれにおいても、低ビタミンD・K血症は単なる低栄養の反映ではないことが示された。 我々は既に日照機会の乏しい施設入居高齢者を対象に、ビタミンD介入試験を行い、現行の目安量(1日200IU)を大幅に上回る、少なくとも1日800IUを要することを示したが、ビタミンDによる骨折予防は、費用対効果に優れることを示した。
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