研究課題/領域番号 |
22500785
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
伊藤 節子 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (50144358)
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キーワード | 食物アレルギー / 低アレルゲン化 / 抗原量 / 卵 / 牛乳 / 小麦 |
研究概要 |
卵の低アレルゲン化には加熱と副材料の影響が大きい。卵白の主要抗原コンポーネントタンパク質である卵白アルブミン(OVA)とオボムコイド(OM)の低アレルゲン化のおこり方の違いのポイントは凝固による不溶化の違いであること、凝固と不溶化が複雑に関与していることを明らかにした。OVAは副材料を用いずに攪拌することなく卵白を凝固させると不溶化して低アレルゲン化する。固ゆで卵や茶碗蒸しが該当する。OMは加熱による凝固がおこらないため固ゆで卵や茶碗蒸し中に検出できるOMはOVAの約1,000倍量である。一方、焼き菓子中の小麦粉などの副材料はOVAの凝固を妨げてOVAを溶出しやすくしアレルゲン性を高める。小麦粉や米粉を使ったクッキーではOVAは凝固性が妨げられ溶出されやすくなり、OMは不溶化するため溶出しにくくなる。結果的にはOVAとOMのアレルゲン性が同程度となる。このように性質の異なる抗原コンポーネントタンパク質OVAとOMのアレルゲン性をヒスタミン遊離試験により評価する系も確立できた。抗原コンポーネント別アレルゲン性と量を的確に評価することは安全な食事指導に繋がるものである。 牛乳については主要アレルゲンコンポーネントであるβ-ラクトグロブリン(β-LG)とカゼインについて検討した。β-LGは加熱によっても、小麦などの副材料によっても不溶化するため、パンや焼き菓子中のβ-LGは不溶化して低アレルゲン化する。カゼインは牛乳単独では加熱による影響を全く受けない。小麦などの副材料により若干の低アレルゲン化が認められるが、アレルゲン性は強く残こる。耐性の獲得を目指した食事指導を行うためにはカゼインの低アレルゲン化についての検討が必要であることが明らかとなった。 小麦の抗原性の評価法と低アレルゲン化については現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はすべて並行して行なっており、順調に進んでいる。その成果は学会誌における誌上発表、国内外の学会における口頭発表として公表している。
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今後の研究の推進方策 |
卵、牛乳、小麦すべてについて今後もさらに低アレルゲン化の研究をすすめていく。とくに卵、牛乳については抗原コンポーネントタンパク質レベルにおける低アレルゲン化を検討することにより、調理上の工夫や副材料の使い方による低アレルゲン化が可能になると考える。その結果をもとに食教育と食物アレルギー児の食事指導に用いることのできるレシピ作成を行なう。
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