牛乳の抗原コンポーネントタンパク質の一つであるβ-ラクトグロブリン(以下β-LG)は加熱により不溶化するため「食べる」側から見た抗原性が低下する。また牛乳を小麦粉に混ぜることによりさらに不溶化が進み、パン中のβ-LGの抗原性は著明に低下した。牛乳アレルギー児における好塩基球ヒスタミン遊離試験において加熱したβ-LGによる反応性が低下することも確認でき、β-LGに関しては加熱やパンなどの小麦製品中に用いたときには抗原性が低下することが明らかとなった。一方、牛乳タンパク質の80%を占めるカゼインは加熱によっても、小麦製品中に用いても抗原性の低下がほとんど認められず、加熱や副材料の工夫以外の方法による低アレルゲン化が必要であると考えられた。 小麦中のタンパク質としてはグリアジンの評価が可能であるが、長時間加熱により通常の調理法に比べて約10分の1程度にまで検出できる抗原量を減らすことができたが、低アレルゲン化の程度は不十分であった。 そこで牛乳と小麦粉を果汁と反応させて果汁中のプロテアーゼにより加水分解することを試みた。パイナップル果汁とキウイフルーツ果汁と反応させたところWestern blottingによりカゼインとグリアジンの低分子化が確認された。またsandwich ELISA法による定量により抗原性の低下が確認された。
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