研究概要 |
哺乳類の体内で、本年度は、抗酸化剤の効果を形態学的並びに定量的に評価するための正確で比較的簡便な方法を考案した。末梢血より好中球を分離し、プロテインキナーゼCの賦活剤であるPMAで刺激すると、好中球細胞質中のp40phox, p47phox,およびp67phoxがリン酸化され、好中球細胞質中の分泌顆粒の限界膜に内在するp22phoxおよびgp91phoxと結合し、NADPH oxidaseが形成され、顆粒腔内に活性酸素を産生する。これを酸化されると蛍光を発するH_2DCFDAで標識することにより、蛍光顕微鏡で、観察することが可能で、また、Flow cytometryで定量的に測定することが可能である。このように産生された活性酸素は、好中球が細菌等を貧食していない場合は、形質膜の方に移動し、好中球外へ分泌放出される。本年度は植物の細胞壁に普遍的に存在するリグニンの構成要素であるProto-catechuic acid(PA), Ferulic acid(FA),およびCaffeic acid(CA)の抗酸化効果を検索した。今回用い用量はそれぞれ100mMとした。蛍光顕微鏡による形態学的観察では、PMAで刺激したコントロールに比べ、これら3種のポリフェノールで処理をした場合には、活性酸素を有する顆粒の数は明らかに減少していた。Flow cytometryによる測定では、好中球の細胞質中の蛍光強度は、これらの抗酸化剤を加えた場合、それぞれ62.9%,71.4%,および86.1%で、CAが最も抗酸化効果が強かった。好中球から分泌放出された活性酸素、すなわち、細胞外の活性酸素の抑制効果は、PAで81.4%、FAで46.7%、CAで77.0%で、細胞外では、PAとCAに強い抗酸化効果が見られた。また、これら3種の抗酸化剤がNADPH oxidase酵素に如何なる効果を見たところ、この酵素の特異的阻害剤であるdiphenylene iodoniumでは、活性酸素産生能が92.1%阻害された。これに比べ、PA, FA, CAでは、それぞれ36.5%,54.6%,27.4%の酵素阻害効果が見られた。本法は抗酸化効果の観察、測定に有効で今後の研究に応用する所存である。
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