研究概要 |
胎児期から幼児期の成長速度は成人期以降の疾病発生に重要な役割を果たしている。ヒトおよび動物における成長は下垂体から分泌する成長ホルモン(GH)が担っており、GHはIGF-1(インスリン様成長因子)の産生を促進しており、そのIGF-1が細胞増殖を誘発する。末梢におけるIGF-1の主要な産生臓器は肝臓である。一方、IGF-1は種々のIGF binding proteins (IGFBPs)が存在し、細胞増殖の誘発と抑制に関与している。H22年度、H23年度においてIGFBP4を用いてpregnancy-associated plasma protein-Aの酵素活性をドメインの組換え体での発現を検討してきたが、好結果が得られなかった。そこで、摂取食物と肝臓におけるIGF-1およびそのIGFBPsの遺伝子発現の関係を検討した。離乳食後の雌ラットに2種類の飼料(同カロリー)を与え続け、成長期において体重、摂食量ともに有意差はなく、またGHの下垂体での遺伝子発現および血中濃度に有意差はないことを確認した。この状態で肝臓を摘出してRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ解析した。両群比較すると、β-actinの差異(SE<10%、STDEV=3.94%)はほとんどなく、IGF-1はvariant 2, variant 4で各々STDEV=16.5%, 23.3%で大きな差異は認められなかった。7種類のIGFBP (IGFBP1から7)のうち、IGFBP5およびIGFBP7以外は肝臓で発現しており、発現しているIGFBPsのうち、IGFBP2は両群において8.5倍の遺伝子発現量の差異が存在した。その他のIGFBPsには大きな差異は認められなかった。以上の結果、食事成分はGH-IGF axisにおいてIGFBP2の遺伝子発現を大きく変化させることが判明した。
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