肥満患者は、エネルギー過剰でもビタミンやミネラルが不足する栄養障害(いわゆる現代型栄養失調)に陥ることがある。この栄養障害を防ぐために私たちは満腹感の得られる「低エネルギーかさ高食(1200kcal、熱量密度0.7 kcal/g)」を開発した。主食(炭水化物)と脂質を半減し、蛋白必要量60g/日を維持し、ビタミンとミネラルを玄米などの加工度の低い穀類で充足した。献立のバリエーションは110種類あり、エネルギー制限は1日ではなく月単位で考慮し、行事食、麺類やカレーは、常食と同じものを提供することで継続性を高めた。これまでに患者の過半数に受け入れられ、その約80%は間食を制限しなくとも体重が減少した。また、「糖尿病食」「肥満治療食」と表題された市販の献立集16冊の栄養価を、食品成分表をもとに算出し「日本人の食事摂取基準2010」と比較検証した。その結果、すべての市販献立集において複数の栄養成分が不足していた。さらに、6つの総合病院で実施された21日分の「一般食」および「糖尿病食」の献立を検証したところ、全ての病院において複数の栄養素が食事摂取基準2010に達していないこと、および病院給食に共通して不足しやすい栄養素が判明した。
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