研究課題/領域番号 |
22500800
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
大向 隆三 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (40359089)
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キーワード | ホロカソードランプ / 光電効果 / 仕事関数 / セシウム |
研究概要 |
本研究は高校や大学で量子論を学ぶうえで効果的な実験教材を開発することである。H22年度は原子による光の吸収と放出現象に焦点を当て、それを目で見て観察できる教材を開発した。H23年度は新たに光電効果の実験教材開発に着手した。 我々の研究のセールスポイントはホロカソードランプに光を照射して光電効果を起こすことで、このような光電効果の観測方法は今までに例がない。そこでまず始めに窒化ガリウム半導体レーザー(波長400nm)からの光をCsのホロカソードランプへ照射し、光電効果の発生とその信号の検出について確かめた。Csの仕事関数は1.9eVであることが知られており、入射光子のエネルギーのほうが圧倒的に大きい。実験の結果、光照射に伴う放電プラズマのインピーダンス変化として、光電効果の信号をオシロスコープ画面上で観測できた。また、入射光強度に対する光電効果信号強度の変化を測定したところ、入射光強度の増加とともに光電効果信号は比例して増加した。さらに光源をハロゲンランプに代え、バンドパスフィルターで中心波長600nm、530nm、450nmの3つの波長域の光(半値全幅はいずれも100nm)を同じ強度でそれぞれCsのホロカソードランプへ照射し、入射光波長が光電効果信号に与える効果を調べた。その結果、短い波長の光ほど大きな光電効果信号が得ることができた。これは金属面での光電子放出に関する量子効率によってもたらされた結果であると考えられる。ホロカソードランプの中には放電をおこすために気体(Ne)が封入されているが、光電子がこの気体に衝突して消滅した効果については今回明らかにすることができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子のエネルギー準位を観測する実験教材を、半導体レーザーを光源として開発できた。小型で持ち運びできる、再現性のよい教材に仕上げることができた。光電効果の実験教材は、ホロカソードランプを光電管の代わりに用いる方法として初めて光電効果の信号観測に成功し、入射光に対する光電効果信号の強度依存性、入射光波長に対する信号強度の変化などを観測できた。これらのことから、ホロカソードランプを光電効果実験教材へ利用できる見通しを得た。
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今後の研究の推進方策 |
ホロカソードランプに照射する光源を単色化し、陰極元素(Cs)の仕事関数を測定できるか試みる。データの解析方法、再現性、観測信号の諸特性を実験により確かめる。得られた仕事関数の値を今までに報告されているCsの仕事関数の値と比較し、放電により金属の仕事関数の値がどのような影響を受けるか明らかにする。使用する金属元素の種類を変えて同様の実験を試み、異なる元素の仕事関数の値も得られるかどうか明らかにする。
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