本年度はホロカソードランプの実験教材化を目指すうえで、光電効果信号検出系に改良を加えた。従来は当該信号検出のためにロックイン増幅器を使用して高感度検出を行ってきた。我々は、物理実験教材として大学生や高校生にでも原理を理解しやすく、実験操作に困難を伴わずに光電効果信号を検出できる方法の確立を目的に、ロックイン増幅器を高性能な電気的なバンドパスフィルタで代替し、信号を検出することを試みた。 我々はこのフィルターとして多重帰還型バンドパスフィルタ―を選択し、設計性能として中心周波数が400Hzでバンド幅10Hzのフィルターを製作した。実際の特性を確認したところ中心周波数は410Hzでバンド幅は20Hzとなったが、この回路の想定した用途に大きな影響は及ぼさないと判断し、この製作したフィルター回路を用いて光電効果信号の検出に取り組んだ。 セシウムが陰極物質となるホロカソードランプにヘリウムネオンレーザー光を照射し、光電効果の実験を行った。上述のバンドパスフィルタ―を通して得られた電気信号から光電効果信号を得た。入射光強度を下げながら光電効果の信号強度を測定し、どれくらいの入射光強度まで信号が検出可能かを調べた。その結果、バンドパスフィルターを使用しなければ直接測定による光電効果信号の検出限界が入射光強度36mW/cm2であったのに対して、我々が製作したバンドパスフィルターによってそれを2.4mW/cm2まで小さくすることが可能となった。この2.4mW/cm2という値は、我々がロックイン増幅器を用いてセシウムの仕事関数を測定した際に用いた入射光強度(2mW/cm2)に匹敵する値であり、我々の製作したバンドパスフィルターはロックイン増幅器と比べても同等の信号検出性能を有すると結論づけることができた。
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