研究概要 |
本研究の目的は,物理教育の改善をもたらすための物理教育・科学教育に対する科学的な研究の手法を開発・改良し,これに基づいてわが国の教育環境に適合する実施可能で効果的な教育手法や教材を,可能な限り客観的で定量的な裏付けを添えて開発し検証することにある。平成22年度は,主に以下の2点について研究を実施した。 (1)力学概念理解度調査のための標準テストの開発と精緻化 米国で開発された理解度測定のための代表的な標準テストFCI(Force Concept Inventory)については,すでに研究代表者らによる和訳が作成されていたが,連携研究者,研究協力者とともに訳文を精緻化した。なお,旧訳と新訳において,測定結果に有意な差が出ないこと,すなわち旧訳の統計的な結果は継続的に比較対象とできることを検証した。さらに,日本で開発された基礎物理調査との比較検討を行い,FCIの代替可能性について検討したが,基礎物理調査との相関は十分に強くはないことが明らかとなった。 (2)ピア・インストラクション方式による相互作用型授業の開発 高等学校物理I及び大学基礎物理学において,研究協力者とともにピア・インストラクションによる相互作用型授業の実践的開発を行った。2010年度は,ピア・インストラクションに適した設問の作成と試用,ICTを活用した実験との併用,小テストとの組み合わせ等を試みた。また,(1)のFCIを科学的な授業評価の指標として用い,Hake ゲインを算出したところ,0.39という値を得た。なお,ピア・インストラクションの教育効果を数学的に記述する理論の構築を開始した。
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