研究課題
モデルを志向した数学学習において、方向の異なる考えを対として全体的に捉え、その核となる数学的思考として下記の4つに特定した。これら4つは、活動が行き詰ったり一旦終わりになったりした時の次の一歩を引き出す契機となる問いであり、「何に着目して、何をするのか」によって特徴づけられる。数学学習においては、これらは相互に作用しながら進展していくことになる。(a)表現:抽象化と具体化という双対関係:2つの世界間の類似関係をつくろうとする考え方である。自分の考えている問題を別の空間で考えられるようにするために、具体的なものの本質を捉え抽象的に表現したり、抽象的なものを具体的に表現したりして考察する行為である。(b)推論:直観的と反省的という双対関係:各々の世界の中での因果関係をつくろうとする考え方である。「AならばB」という命題を導き出すために、「いったいどうなるか」といった結果を直観的に探ったり、「何故そうなるか」といった根拠を反省的に考え論理的に説明したりする行為である。(c)対象:一般化と特殊化という双対関係:2つの世界間の類似関係、各々の世界の因果関係の両方に対して、それらが成立する各々の世界の集合の適用範囲を動的に動かす考え方である。考えている対象をより深く理解するために、自分の考えている対象を動的に捉え、それらを広げて考えたり、限定して考えたりする行為である。(d)集合関係:分化と統合という双対関係:2つの世界間の類似関係、各々の世界の中での因果関係に着目し、これまで構築した複数の類似関係、因果関係を集合的に整理しようとする考え方である。自分がこれまで獲得した知識をより洗練させ、体系化していくために、複数の類似関係、因果関係をさらに分けて整理したり、別々の類似関係、因果関係を同じとみなしたりする行為である。
2: おおむね順調に進展している
研究目的を達成するために、数学的思考に関わる文献をレビューし、学習を連続的に進展させるという論点から数学的思考の類型を明らかにできたため。
モデル主義に基づく数学教育を構築するために、活動を連続的に進めていくための鍵となる数学的思考がどのような学習活動において有効に働くのかを特定すること。教材研究、教材開発をしながら、モデルが有効活用される典型的な活動類型を明らかにすること。
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Journal of Mathematics and System Science
巻: Vol.2 Number 6 ページ: 359-367