研究課題/領域番号 |
22500808
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
梶原 裕二 京都教育大学, 教育学部, 教授 (10281114)
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キーワード | 科学教育 / 課題研究 / 動物組織 / 分裂組織 |
研究概要 |
「研究の目的」高等学校・新学習指導要領に新設された「課題研究」は生徒が理科本来の調べる・観察する楽しさを学ぶ上で重要な取り組みで、様々な課題・方法を用意すべきである。これまで、身近な植物を対象とする標本作成法を考案している。本研究では、より標本作製が困難な動物組織を観察するための手法の開発と課題の充実を目的としている。 「研究経過」一般的な動物組織の標本作成には、固定、パラフィン包埋、ミクロトームで薄切、脱パラフィン、染色、封入という煩雑で、長時間を必要なため、高等学校で実施されることはない。申請初年度のH22年度に、包埋剤としてOCTコンパウンド及び、試料の支持体として、予め20%エタノールで置換したブロッコリー髄を用いる簡易凍結切片法を考案した。この手法により、パラフィン切片法と同様に質の高い標本が、1時間という極めて短い時間で作成できた。 当該年度は、本手法により、学校での実施を念頭に、キンギョ、フナ、カエルなどの入手しやすい材料を用いて、解剖実習と後に続く組織実習を立案した。その結果、安価で多量に入手しやすい動物材料から、キンギョの網膜、エラ、腸管、卵巣などの器官で、教科書・資料集と同質の標本が得られ、細部の構造まで詳しく観察できた。さらに、現場でのパイロット授業として、京都府立城南菱創高校で高大連携授業(40名)を実施した(H24/2/22)。その結果、マウスの個体、ビデオによる解剖実習と内部器官の理解、組織標本作成、組織の観察という、動物の体の階層的な構造を実感する一連の実習を実施できた。この論旨の流れをもった実習は、基本的に重要であるにも関わらず、上述の困難さから学校現場で実施されていない。また、ニワトリ胚を用いて、腹部の構造を理解しやすい新たな発生実習を考案した。 さらに、本手法とプロモデオキシウリジン・抗体染色を併用し、精巣や小腸組織の分裂細胞を検出する2時間程度の実習を予備的に開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(H22)に、学校でも短時間で実施可能な簡便な動物組織実習法を考案した。 当該年度(H23)は、学校では、特に生物の場合、材料の入手方法や価格・数量などが、実習を実施しにくい理由となる。簡単に入手可能な魚類、両生類を材料に本手法が適応でき、マウスと同様の組織標本が得られたので、広く実施できる状況となった。また、マウスを用いた解剖、器官の理解、組織標本の作成・観察という一連の実習が、40名という高校のクラスにおいて3時間で実施できることもわかった。また、ニワトリ胚を用いた体の構造を詳しく理解する発生実習を考案した。さらに、予備的ではあるが、分裂細胞の検出もできたので、生体の動的平衡や幹細胞の理解を促す実習の可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
本手法を用いて、一般の高等学校に備わる設備で、(1)解剖・組織実習、(2)動物組織における細胞の増殖と消失という、生体の動的平衡、及び幹細胞システムを理解する実習を考案する。(3)また、学校で実施できるようなアポトーシスなど細胞死を検出する簡便な手法を考案する。これら(1)~(3)の実習例を示し、高校生が自分の考えで、発生中の胚や成体を材料にして、生物の体のしくみを調べる課題研究を行う素地を整える。
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