研究概要 |
日本,中華人民共和国,韓国,台湾の大学で使用されている機械設計に関係する教科書を収集し,比較・検討した結果,以下のような知見を得た. 1.中国の力学の教科書は実用的で「力学をどのように実際の問題に適用するか」という視点で編集されている.この編集方針は国家的な戦略に基づいており,多数の教科書において同様な傾向が見られる.機械設計の分野では,実際の設計順の章立てであったり,関連分野の解説などを含めてたりしている場合が多い. 2.韓国では,従来は英文の教科書が主流であったが,しだいに英語の原著を韓国語訳した教科書や韓国語のオリジナル教科書が出版されつつある.内容に関する検討は今後に行う予定である. 3.台湾では英語の教科書を使用しており,学生の理解を助けるために中国語の副読本が利用されている。このような事情の下では,力学のような基礎的学問には世界的に学習者に支持されている良書が多くあるのに対して,「機械設計関連の教科書において使用されている(米国の)規格が自国の規格と一致しない」という問題点がある.また,国内の工学書の市場が小さいため,実際の生産に直結するエンジニア向きの工学書が少ない. 4.日本の教科書は他の3国に比べて,教科書のボリュームが小さく,コンパクトにまとめられている.一般的には理論や式の展開を中心に解説されたものが多い.また,教科書(著者)によりかなり執筆方針が異なり,日本の工学書はバラエティに富むといえる.
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