研究概要 |
国内における気候変動などに関する多くの講演会に参加して,それぞれの講演内容について分析した.その結果,現象の説明が中心であり,「不確実性」に関する説明がほとんどなされていない事がわかった.日本の一般向け講演会と"informed citizen"の育成を目指す米国における気候変動教育の違いが明確となった.今後,本研究では「不確実性」指導のための学習モジュールの開発が必要であると判断された. 「オゾン層」と「地球温暖化」と「風力発電」に関する学習モジュールを作成し,高校生向け体験講座や教員研修会,大学の講義などで実践し,参加者の理解や学習モジュールの効果を分析した.体験講座に参加することで,大気環境に対する理解が深まり,気候変動に対する意見や態度が明確になることが示された.また,教員研修会における事前・事後クイズの分析から,理科教員においても気候変動などの大気環境に関する知識が曖昧であること,研修の効果が必ずしもプラスに働かないことが判明し,研修の実施方法を改善する必要があることがわかった. 気候変動対策としては,再生可能エネルギーの利用が必要となるので,太陽エネルギーの学習モジュールを開発した.内容は太陽エネルギーの利用形態として,太陽熱と太陽光発電を示し,定量的にその短所と長所を学習するものである. 気候変動教育は「持続可能な社会の構築」と関連し,「緩和」と「適応」という概念を指導する必要がある.しかし,何故「緩和」と「適応」が必要なのかについては,十分に指導されているとはいえないことがわかった.また,気候変動教育を国際比較した場合,この「緩和」と「適応」のバランスが,先進国と発展途上国では異なり,学習モジュールの作成において注意が必要であることがわかった.
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