研究概要 |
研究実施計画では「学習モジュールの開発」と「国際比較の調査」を今年度の研究課題とした、「学習モジュールの開発」では,ソーラーオーブン模型を利用した太陽エネルギーの学習モジュールの実践と学会発表を行い,欧州気象学会では「Outstanding Poster Award」受賞し,その有効性が確認できた.また,ソーラーオーブン模型を利用した学習モジュールは,高価な機材を必要としないために,発展途上国も含め多くの国で実践可能かことが特徴である.また,気候変動教育の効果測定では,プラス面だけでなく,マイナス面に働くことも確認され,気候変動教育の難しさが確認された. 気候変動教育の国際比較では,日本と英国と米国の初等教育を中心に調査し,大きな違いがあることがわかった.例えば,英国では理科ではなく地理の中で天気と気候,気候の変化が学習されている.日本の初等教育でも,教科「社会」で気候が取り扱われているが,その意味や定義の説明はなく,科学的な説明のなされている英国とは大きく異なることがわかった.また,日本の理科では気候について学習しないが,環境の変化の学習では地球温暖化などが取り扱われており,気候変動教育における問題点が把握できた. 欧州や米国における気候変動教育の中心的課題は「不確実性の伝達」であり,学会では科学コミュニケーションの重要性が活発に議論されていた.また,学校教育だけでなく,新聞やTVのニュースなどメディアの果たすべき役割についても議論されており,日本とは気候変動教育の社会的背景が大きく異なることがわかった,そして,先進国(日本,米国,英国)と発展途上国(バングラデシュ)における気候変動教育を比較すると,先進国では緩和に,発展途上国では適応に重点が置かれていることがわかった.つまり,先進国で開発された気候変動教育の教材は,そのままでは発展途上国に応用できないことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己点検の評価の理由は,主に次の2点である.第一は,本研究で開発・実践してきた学習モジュールの効果を国内外の6つの学会で発表することができ,研究結果に対するフィードバックを受けることができ,最終年度の完成に向け,方向性が明確になった.第二は,国際会議における交流などを通して,英国を含む欧州と米国という先進国と典型的な発展途上国であるバングラデシュに関する情報を入手することができ,国際比較のための多くの材料を入手することができたことである.そして,最終年度に発表する研究成果がまとまりつつある状況から,「研究の目的」の達成度については,「おおむね順調に進展している」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては,最終年度の活動は次の2点に重点を置く.第一は,研究成果の広報・普及のための学会と論文作成である.第二は,これまで国際比較に関する研究を踏まえて,気候変動教育分野における国際交流に寄与することである,国際交流に関しては,米国とバングラデシュをその対象とする.米国においては,コロンビア大学とNASAゴダード宇宙科学研究所が共同で運営する気候システム研究センターのアウトリーチプログラムとの連携を深める.バングラデシュにおいては,現在進行中のカリキュラム改訂で気候変動教育が組み込まれることになり,その実現に向けたJICAの支援プロジェクトに協力することで,本研究の成果の利用と深化を図る.気候変動教育における国際交流においては,本研究の将来に向けた方向性と発展性を検討する場とを考えている,
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