本研究の目的は,気候変動教育の学習モジュール作成と理科の枠組みで行う場合の問題点と解決策を探ることである.研究実施計画では,開発した学習モジュールの実践と気候変動教育に関する国際比較の結果や学習モジュールを外部発信していくことを目標とした. 実践面では日本学術振興会の支援を受けた高校生のための環境科学講座「オゾン層と気候変動の科学」を開催した.この講座では観測データを利用した学習モジュール「地球温暖化の検証」と「沈む氷の実験」を追加した.また,神奈川県立総合教育センターの「環境学習のための研修講座1」が本学で開催され,その中の「環境とエネルギーをテーマにした体験的な学習活動」(講義・実験)を担当し,本研究の成果を実践した.再生可能エネルギーの変換効率に関する学習モジュールを利用して,その指導上の留意点を解説した. 外部発信面では「気候変動教育の国際比較」については日本科学教育学会で,「地球環境問題に対する理解や気候変動教育の効果」については,気候変動に関する国際会議や欧州気象学会で発表した.本研究で開発する学習モジュールは,単なる気候変動に関する知識理解ではなく,気候変動に対する学習者の意思決定に影響し,生活スタイルの転換に導くことを目的としていた.しかし,成果発表のための効果分析から,理科の枠組みで行う気候変動教育によって,学習者の理解が深まることは確認できたが,学習者の行動パターンや意思決定が指導者側の意図した方向に向かうとは限らないことも確認された. 最終年度の研究実績の概要をまとめると,気候変動教育の目的の達成には,理科の枠組みを越えた取り組みが必要であることがわかった.また,諸外国では気候変動教育が市民教育の一環として実施されていることも多いことがわかった.今後,理科の枠組みを越えた気候変動教育のカリキュラムの構築が必要であると考えられる.
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